相続コラム

「相続税」のコラム

名義預金の帰属者(つまり実質的な所有者)は誰なのか?

その判断基準はおおむね次の通りです。

 

1.資金の原資

   そもそも、その名義預金口座のお金は、どこから発生したものでしょうか?

   Aさんが汗水流し働いて得た給料をせっせと預け入れたのであれば、

   その預金はAさんのものである、といえるでしょう。

   そうではなく、例えば、他人であるBさんのお金を振り込んだ、ということであれば、

   その原資はAさん自身から生じたものではありませんので、

   その帰属判断が大きな問題となります。

 

2.管理支配

   その預金口座の通帳と印鑑はAさんが管理し、

   かつAさんの意思でいつでも好きな時に預金残高を引き出すことができる、

   という状態であれば、その預金口座はAさんのものである、といえましょう。

   一方、Aさんの名義であるにもかかわらず、その通帳等はBさんが管理し、

   その預金引き出し等もAさんの自由にできない、ということであれば、

   その預金口座の管理支配権はBさんの側にありますので、

   Aさんの財産である、と主張するのは少々難しいのではないでしょうか。

 

相続の際は、

上記の1と2の基準を総合的に勘案して、

その名義預金の帰属を判定することになります。



例えば、このようなことがあったとします。

 

資産家Aさん(男性)が、妻Bさん名義の預金口座を開設しました。

Aさんは、自分の財産を、そのB名義預金に毎年少しずつ移し替えました。

そして数十年経ち、そのB名義預金は結構な残高になりました。

Bさんはその事実を知っておりましたが、特に何も言いませんでした。

 

そして、Aさんが亡くなりました。

 

Aさんは資産家の筈なのに、Aさん名義の預金残高が・・・随分と少ない。

一方、専業主婦であったBさん名義の預金残高が・・・随分と多い。

 

相続税を申告する際、そのB名義預金はどのような扱いになるでしょうか?

この扱いを一歩間違えてしまうと、とんでもないことになります。

(脅かすわけではありませんが)後々の税務調査で大問題に発展することがあります。

 

本来はAさんの財産なのに、形式上の名義はBさんになっている。

このような現象は、特に預金口座に多く見られます。

これを「名義預金」といいます。

つまり「実質上の名義(Aさん)」と「形式上の名義(Bさん)」が異なる、ということです。

 

相続税の計算上、最も注意すべき「名義預金」のポイントを、

シリーズ形式で数回に渡って解説します。

 

ご自身のご家族名義の預金口座にお金を移動させる行為は、

くれぐれもご注意ください!

たとえその相手が長年連れ添った配偶者であっても、です。



例えば、このようなケースです。

 

1.妻子ある男性が、実母を受取人とする生命保険契約に加入して保険料を支払い続けた。

         ↓

2.その後、その男性が亡くなり、実母は保険金を受け取った。

 

民法上、

死亡にかかる生命保険金は、相続財産ではなく、その受取人固有の権利とされております。

 

ですから、このようなケースの場合、

その亡くなった男性の相続人は「妻」と「子」ですので、

まず原則として、相続人以外の者が、その相続財産を受け取ることはできません。

(もし相続人以外の者が受け取る場合、それは「相続人からの贈与」ということになりますので、

 贈与税が課されてしまいますのでご注意を)

 

しかし死亡保険金は相続財産ではありませんので、

相続人以外の者であっても、ちゃんと契約上「受取人」として指定されていれば、

その保険金を受け取ることができるのです。

 

 ただし、相続税の申告においては、次の点にご注意下さい。

 

1.死亡保険金は、民法上は相続財産ではありませんが、

  相続税法上は「みなし相続財産」という扱いを受け、相続税の課税対象となります。

  ですから相続人でない人(上記の例の場合は実母)が受け取った保険金については

  相続税の課税対象として、相続税の申告にきちんと反映させる必要があります。

  つまり、上記の実母は、相続人と共に、相続税の申告納付を行う義務があります。

 

2.相続人以外の者が受け取る保険金については、いわゆる「死亡保険金の非課税制度」

  (500万円×法定相続人の数=非課税、という有名なアレです)の対象外です。

  ですから実母が受け取った保険金は、その全額を相続財産に加算して申告納付する

  必要があります。

 

ごくまれに、例えば「内縁の妻」であった方から

「内縁の夫が亡くなって保険金を受け取ったのですが、私は相続人でないので相続税を納める必要はありませんよね?」というご質問を受けるのですが、

「残念ながら間違いです。他の相続人と一緒に相続税の申告納付を行って下さい。」

とお答えしております。

 

保険金の受け取りについては、くれぐれもご注意下さい。



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