相続コラム

「2012年12月」のコラム

早いもので、もう年の瀬です。


今年一年間、弊社をご愛顧頂き、本当にありがとうございました。



北海道札幌市中央区の税理士日記 ~ 北のサクセス・ストーリー ~-H24忘年会


来年は新スタッフが増えて、更に飛躍する一年になります。

引き続き頑張る所存ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。


年末年始は、

12月29日(土)から1月6日(日)までの8日間、

お休みとさせて頂きます。



では皆様、よいお年を。



会計検査院とは何ぞや?  ・・・については解説を省略します。

私が中学生の頃(もう20数年前ですが・・・)、公民の授業で、先生が「鬼の会計検査院」と口癖のように何度も繰り返していたことを思い出します。

へえ、そんな怖い組織なんだなぁ、と当時の私は思ったものです。


さて、この会計検査院が、我が国の税制に口を挟み、それが元となって税制改正されることがままある、ということは皆さんご存知でしょうか。


かつて居住用賃貸アパート経営において「自販機還付スキーム」なるものが大流行したことがあります。実はこれも、会計検査院が指摘したことが一つの引き金となって、このスキームを利用した消費税還付が事実上できなくなるよう税制改正されました。


さて、今年の10月、会計検査院が、新たな指摘を財務省に対して行いました。

個人が相続した財産を売却した際の「相続税額の取得費加算」の特例に対してイチャモンを付けたのです。


この特例は、相続人が、その相続により取得した財産を、相続税の申告期限から3年以内に売却した場合には、その財産にかかる相続税額を、その売却所得の計算からマイナスすることができる、というものです。つまり相続税額が経費として認められるので、譲渡所得税が低くなります。


実はこの特例、土地の売却についてのみ、更に特例が設けられております。

土地を売却する場合においては、その売却土地にかかる相続税だけでなく、相続により取得した全ての土地にかかる相続税額を経費にできますよ、というものです。


なぜこんな特例があるのかといいますと、かつてバブル時期に土地が高騰して納税者の負担が重くなり過ぎたため、その負担を少しでも軽減するためだったのだろうと思われます。


しかしバブルはとっくに弾けました。

つまり、この土地売却だけを優遇する意義はもう無くなってしまった、ということです。


これに目を付けたのが、会計検査院です。

「この優遇措置はもはや意味がないので、廃止を検討するように」

と財務省に付きつけた、ということです。


もしかしたら来年度か再来年度は、この土地の優遇特例を廃止する、という方向で税制改正案が動き出すかもしれません。



相続のお話とは少々外れますが、最近まれにご相談を受ける「尊厳死」について解説します。


尊厳死とは、現代医学では回復する見込みのない状態になった者が、医師による過度な延命治療を施されることなく、人間として自然な死を迎えることをいいます。


意識が全くない状態で、体中にチューブや機器を巻き付けられて無理やり生かされ続けるのは御免だ、と考える人は多いでしょうし、それを支える身内の心労も多大なるものがあります。


しかしその一方で、医師は、患者を一日でも長く生かせる義務があります。


そこで「尊厳死宣言公正証書」の出番となります。


この公正証書をあらかじめ作成しておけば、いざという状態になったとき、医師に対して「私に尊厳死を迎えさせて下さい」とお願いすることができます。


日本公証人連合会の解説文、文例がございますので、記載します。

http://www.koshonin.gr.jp/ji.html#03


ポイントとしては、まず公正証書にすることです。

その人自身が正常な精神状態で意志表明したものである、ということが保証されます。


そして、最も近い身内の承諾を事前に貰っておき、その旨を文面に記載することです。


さて実際のところ、医師がこの尊厳死宣言を守らなければならない、という義務はありません。医師はその自己判断によって、この公正証書を尊重してもよいし、無視して延命治療を施してもよいのです。

しかしとある調査によれば、医師の9割以上はこの尊厳死宣言を尊重しているようです。


遺言を作成される際には、この尊厳死宣言についても併せてご検討されてみてはどうでしょうか。



私は決して税務官庁の手先ではありませんが、しかし税理士として、納税者様に対して法に沿った適切な申告納付をして差し上げる義務を有しております。


相続税の申告を承る際、ごくまれに「この財産は税務署に絶対バレないと思いますので、申告財産から外してもらえませんか?」というご相談を受けることがあります。


もちろん大部分のお客様はきちんとした納税義務をお持ちの方ですから、このような相談は本当にごく稀です。


そのような相談を受けた際、私は必ず下記の通り回答します。

道徳論的なこと云々はさて置き、極めて現実的な回答です。


まず税務署というものは、過去数十年間のノウハウの蓄積があります。

何のノウハウかと申しますと、まさに「納税者がどのようにして資産を隠し、納税逃れをしようとするか」というノウハウです。

ですので、小手先三寸の浅知恵は必ず見破られます。


更に、税務署の調査能力は、納税者の想像を遥かに超えます。


もちろん我々税理士も、相続税の申告をする際には、適切な申告をするために最大限の努力はします。

例えば、故人が取引していた金融機関に出向いて過去の取引内容を調べたり、場合によっては配偶者や子など相続人の財産も調査し、生前に財産の移転があったかどうかを調べたりします。

しかし、税理士はあくまでも私人でありますので、その調査能力にはおのずと限界があります。つまり、金融機関が税理士にどこまで協力してくれるかというと、そう簡単に全ての情報を曝け出してくれるわけではないのです。


ですから、我々税理士が最も重視するのは、相続人に対するヒアリングです。「故人から生前に財産を贈与されてませんでしたか?」とヒアリングして、「いや何も贈与されてません。」と回答されればそれを信じるしかありませんし、「故人の預金口座から多額の出金がありますが、このお金はどこに消えたのですか?」とヒアリングして、「いや全く知りません。」と回答されればどうしようもありません。


しかし税務署は国家機関ですから、強い権限があります。金融機関に対して「この人の情報を全て開示してください。」と要求すれば、金融機関側はそれにヘコヘコと応じる義務があります。我々税理士が同じ要求をしてもけんもほろろであるのとはえらい違いです。


税務署の調査官は、場合によっては金融機関の支店内部にまで出張り、故人や相続人の印鑑票、入出金伝票の筆跡、引き出したお金の行き先、貸金庫の開閉記録など全て強制的に調査します。

ここまでやられますと、もう納税者側はグウの音も出ません。


相続税の税務調査は、その申告期限から約2〜3年後です。

忘れた頃に、いきなり電話が鳴ります。

その際に、「私は自らの知り得る情報を全て税理士に伝えて、適切な申告を行っている」という精神状態であるのと、「ああ、あの財産を隠している。バレたらどうしよう。」という怯えた精神状態であるのと、どちらが精神的に健全でありましょうか。

たとえ前者であったとしても、税務調査というものは疲れるものです。相当なストレスを抱えるものです。

これがもし後者であったとしたら・・・そのストレスは想像を絶します。



何度も申し上げますが、私は決して税務署の手先ではありません。

しかし、隠しても、ご自身のためになることは一切ありません。

税理士に全てを開示して、適正な申告を行いましょう。


ごくまれに「俺は隠し事を隠し通せたぜ!」と武勇伝を語る人がいますが、そういう人は、たまたま運が良かっただけです。

世の中全ての人が、ずっと運が良いわけでは決してありません。



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