相続コラム

「2013年5月」のコラム

遺贈とは、遺言により、人に自らの財産を無償で譲ることです。


推定相続人(将来相続人となるであろう人)以外の人に対しては、自らの死後、この方法で財産を譲り渡すことができます。


遺贈には、二種類あります。


まず包括遺贈

これは、遺産の全部または一部を、割合を示して譲ることです。


【具体例】

 ・山田太郎に、私の全財産を遺贈する。

 ・佐藤花子に、私の全財産の2分の1を遺贈する。


そして特定遺贈

これは、具体的な特定財産を譲ることです。


【具体歴】

 ・田中一郎に、現金○万円を遺贈する。

 ・鈴木ハナに、○○市○○番地の土地を遺贈する。



これらの遺贈は、いずれも放棄することが可能です。

ただし、その方法が異なりますので注意が必要です。


まず包括遺贈の放棄ですが、これは裁判所で放棄の手続きをしなければなりません。

期限は3ヶ月以内です。

なんか相続放棄の手続きと似ておりますが、これは「包括遺贈は相続と似たようなもんである」という考え方に基づくものです。


そして特定遺贈ですが、これは特に裁判所での手続きは必要ありません。

口頭又は書面で、他の相続人等に放棄する旨を伝えれば済みます。

後々の証拠を残すためにも、できれば書面できちんとすべきでしょう。

決まった書式は特にありません。放棄する旨が理解できる内容であれば充分です。

これは特に期限はありませんが、もちろん早いに越したことはありません。



なお、遺贈を放棄した財産は、一体どうなるのでしょうか?

これは通常の相続財産として、相続人間において遺産分割協議の対象となります。



立木の評価について若干補足します。


山林などに生えている立木の評価は、財産評価基本通達において次の通り評価することになっております。


11ha当たりの標準価額×地味級×立木度×地理級×地積=評価額


まず標準価額ですが、国税庁が各都道府県ごとに作成しております。

具体的には、樹木の種類(から松、杉等、とど松、雑木)及びその樹齢により、1ヘクタールあたりの価額が定められております。

この標準価額が、まずは評価額の基礎となります。


続いて地味級ですが、これは要するに「地面の味(あじ)」、つまりその木が生えている地面がどれだけ肥えているか、ということです。

そこに生えている樹木の種類、及びその太さにより、三段階に分けて評価されます。つまり太ければ太いほど、肥沃な土地である(=評価額は高くなる)ということになります。


そして立木度は、その場所にどれだけ木が密集しているかどうか、です。

密集しているほど評価は高くなります。


地理級は、その名の通り「地の利」です。

つまり伐採した木を運び出して、最寄りの製材所(または木材市場)に持ち込むまでの距離が近いほど高い評価になります。

この地理級は、さらに二つの要素に分かれております。

まず「小出し距離」。これは山のふもとの集積場までの距離によります。

次に「小運搬距離」。これは集積場から製材所までの距離によります。


上記の通り、立木は色々な要素を加味して評価されます。

木を大事にする文化を持つ日本ならでは、ということでしょうか。



亡くなった人が、山林や原野などをゴッソリ所有していた、

というケースがよくあります。

先祖代々の所有であるケースもあれば、原野商法、そこまで悪質でなくとも田中角栄の日本列島改造論で全国が湧きに沸いた時代に勢いで購入した、というケースもよくあります。


大抵、相続人は

「こんなもの貰っても仕方ないよなぁ。」

とウンザリした表情を見せることが多いのですが、

しかし相続財産であることには違いありませんので、相続して頂くしかありません。そこの市町村に寄付したいと仰る方も多いのですが、現金や宅地ならばいざ知らず、今時の市町村は山林や原野をなかなか受け取ってくれません。


ところで、山林は、その名の通り、山であり、その上に木が立っております。

これらはそれぞれ、別々に評価します。


まず山ですが、市町村の固定資産評価額を元に、所定の倍率を乗じて評価します。


そして木、つまり立木(りゅうぼく)ですが、これが非常に面倒です。


相続税の財産評価基本通達では、次のとおり評価方法が定められております。

通常の森林の場合です。


11ha当たりの標準価額×地味級×立木度×地理級×地積=評価額


もう何のことやらサッパリ分かりませんね。

ここで全て解説するとキリがないので、割愛します。


まず重要なのは、立木に限ったことではありませんが、現地調査です。

しかし、山林や原野の場合、そもそも正しい場所がどこなのか判別しにくいケースがよくあります。

特に北海道の僻地だと、穴が開くほど図面を眺めても、一体どこにあるのかサッパリわからない、というのは珍しいことではありません。

何となく「この辺かなぁ」とアタリを付けて車で行ってみたら、途中で道路が途切れて行けなかった、なんてことも…。

もう一つの調査方法は、各都道府県が作成している森林調査簿です。

役所に問い合わせれば、簡単に閲覧し、写し(コピー)を貰えます。

この調査簿に、木の種類や樹齢などの情報が記載されてます。


単なる雑木林だと思っていたのが、意外と高値で売れることもあります。

あまり面倒がらずに、相続を一つの良い機会だと考え、財産の一部としてキチンと見直してみることをお勧めします。



生命保険というものは、様々な契約形態があります。

夫が契約者であり、かつ被保険者も夫。なのに、保険金の受取人は妻。

という保険契約にすることもできます。


そんな保険に加入すると「さっさとくたばれ」と妻に思われてしまいそうですが…、それはさておき。


この場合において、妻が受け取った保険金に対して税金はかかるのでしょうか?


実は、受け取る保険金の内容によって、その答えは違ってきます。


1.死亡保険金の場合

これは相続税の対象となります。

ただし非課税枠(500万円×相続人の数)がありますし、そもそもそれを含めた故人の財産総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。


2.満期保険金(または満期前の解約返戻金)の場合

これは贈与税の対象となります。

つまり、その保険契約の保険料を負担していた夫から、妻に対して保険金の贈与があったものとみなされます。


3.入院給付金の場合

これは非課税となります。

契約者・被保険者である夫がケガや病気で入院したことにより支給される給付金の受取人が妻である場合には、その給付金は贈与税の対象にもなりませんし、所得税の対象にもなりません。

何故かと言いますと、これは「その給付金で妻が夫の入院費用を支払うだろう」という前提があります。


フツーに考えて、そうですよね。よほど夫婦の仲が悪くても、さすがにそういう状況になれば大抵の妻は夫を支えるもんでしょう、たぶん。


ですので、税金はかかりませんが、もし妻が確定申告で医療費控除を受ける場合には、医療費の額からその給付金の額を差し引く必要があります。給付金で医療費をまかなったのですから、これもまた当然のことでありましょう。


生命保険と税金の関係は非常にややこしいので、よく考えてから加入しましょう。



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