相続コラム

「贈与税」のコラム

なぜこのようなことを長々と説明しているかと申しますと、
結局のところ、そもそも

「税務署に『贈与』として認められなければ何の意味も無いから」

です。

そのためには証拠を残すことです。

これをしっかりと理解したところで、
ようやく具体的な税率の有利不利の論点に入ることになります。

税率の有利不利とは、相続税と贈与税それぞれの税率を比較し、
どちらが有利かを比較することです。

例えば何百万円の贈与をした結果、
その贈与にかかる贈与税率が何パーセントであるか、

そして仮にその贈与をしなかったとすれば、
その財産にかかる相続税率が何パーセントであるか、

上記を比較し、
パーセンテージの低い方を選択する、ということです。


とある事例。
相続時精算課税制度を使って、父が所有する土地を息子に贈与した、とします。

その土地の贈与時における評価額を500万円と評価して申告しましたが、その評価は誤りで、実は600万円でした。

さて、どうすればよいでしょうか?

もちろん、ただちに修正申告をするのが大原則です。
しかし、国税の時効は5年です。
もし5年を過ぎてその誤りに気付いた場合はどうすれば?

ご承知の通り、相続時精算課税制度を使って贈与した財産は、相続が発生した際に相続税の課税対象となります(既に納めた贈与税は、相続税額から差し引かれます)。
上記の事例の場合、相続税の課税対象となるのは、申告済みの500万円でしょうか?
それとも正しい評価額600万円でしょうか?

正解は、600万円です。

【相続時精算課税適用財産について評価誤り等が判明した場合の相続税の課税価格に加算される財産の価額】
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/16a/13.htm

なおウラ話ですが、税務署は、相続時精算課税制度の贈与税申告があった際、その申告内容をさほど真剣にチェックしないようです。
「どうせ相続時に精算されるから」という理由だそうです。

最近お受けする相続税申告において、相続時精算課税制度を活用していたケースが段々多く見られるようになっております。
現金の贈与であれば特に問題ないのですが、土地などを贈与していた場合には、その贈与時の評価方法を改めて見直しさせて頂くことにしております。

上記の事例は実際の評価額が高いケースですが、もしかしたら低いケースもあるかもしれません。
だとしたら、やらなきゃ損です。

生前贈与のご相談にいらっしゃるお客様から、ほぼ必ず次のようなご質問を受けます。


「先生、毎年同額の贈与を継続すると危険だ、って色々なサイトに書いてますけど、本当ですか?」


確かに、インターネットで「連年贈与」とググると、出るわ出るわ。

よくもまあ、こんな妄想をまき散らす輩が多いもんですなぁ。


はっきり断言しますが、現実問題として、税務署が連年贈与を認定課税するのは不可能に近いです。


連年贈与とは。


例えば、親が子に対して100万円の贈与を10年間続けた、とします。

普通に考えれば、年間110万円の贈与税基礎控除の範囲内の贈与なので、贈与税はかからない、ということになろうかと思いますが、ここでお上(税務署のことです)が桜吹雪の入れ墨をちらつかせて登場し、


「おうおう、これは最初の時点で『1000万円の贈与をします。お金は10年間分割払いします。』という贈与契約を親子間で交わした、ということじゃねぇかよぉ。つまり1000万円の贈与だ。大人しく贈与税を払いやがれ。」


と言って贈与税を巻き上げる、という類のものです。


でも、これって、どう考えても現実有り得ないでしょう。

まず最初の時点で「1000万円の贈与契約が存在した」ことを立証するのが難しい。

そんなウソっぽい契約を書面で交わす馬鹿正直な親子なんて、この世に存在するのでしょうか?


毎年毎年、その都度「今年も100万円贈与しましょうね。」と双方意思確認をし合い、改めて100万円の贈与契約を履行する、というのが普通でありましょう。

(契約を履行、と大層な文言を使いましたが、口約束であっても契約は契約ですので)


銀行さんとか、新米の若手税理士さん(まあ私も若手っちゃ若手ですが・・・)とか、必要以上に不安を煽り過ぎてやしませんか?


だから大丈夫ですよ、・・・と、私はご相談にいらっしゃるお客様に、説明し続けているワケです。

一体今まで何百回、この説明をし続けたことでしょう。

あーもう疲れた。


インターネット上で氾濫する情報は、必ずしも正しいとは限りません。

情報過多の世の中、皆さんよくよく注意しましょうね。



生命保険というものは、様々な契約形態があります。

夫が契約者であり、かつ被保険者も夫。なのに、保険金の受取人は妻。

という保険契約にすることもできます。


そんな保険に加入すると「さっさとくたばれ」と妻に思われてしまいそうですが…、それはさておき。


この場合において、妻が受け取った保険金に対して税金はかかるのでしょうか?


実は、受け取る保険金の内容によって、その答えは違ってきます。


1.死亡保険金の場合

これは相続税の対象となります。

ただし非課税枠(500万円×相続人の数)がありますし、そもそもそれを含めた故人の財産総額が基礎控除額以下であれば、相続税はかかりません。


2.満期保険金(または満期前の解約返戻金)の場合

これは贈与税の対象となります。

つまり、その保険契約の保険料を負担していた夫から、妻に対して保険金の贈与があったものとみなされます。


3.入院給付金の場合

これは非課税となります。

契約者・被保険者である夫がケガや病気で入院したことにより支給される給付金の受取人が妻である場合には、その給付金は贈与税の対象にもなりませんし、所得税の対象にもなりません。

何故かと言いますと、これは「その給付金で妻が夫の入院費用を支払うだろう」という前提があります。


フツーに考えて、そうですよね。よほど夫婦の仲が悪くても、さすがにそういう状況になれば大抵の妻は夫を支えるもんでしょう、たぶん。


ですので、税金はかかりませんが、もし妻が確定申告で医療費控除を受ける場合には、医療費の額からその給付金の額を差し引く必要があります。給付金で医療費をまかなったのですから、これもまた当然のことでありましょう。


生命保険と税金の関係は非常にややこしいので、よく考えてから加入しましょう。



相続税申告の税務調査で結構論点になりやすい部分なので、ここで触れておきます。


学生あるいは無職など、自ら生活費を稼ぐことができない子に対しては、親がその生活費を工面するのが普通でしょう。

この生活費の工面が、いわゆる「贈与」として贈与税の対象になるかどうか、というのがまず第一の論点になります。


原則として、贈与税の対象にはなりません。


相続税法第二十一条の三(贈与税の非課税財産)
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

ただし、条件があります。

あくまでも、その人の生活費(あるいは教育費など)に充てる範囲内において、その都度工面した場合に限られます。


具体例を挙げましょう。

実家が北海道で、東京の大学に通って下宿生活を送っている息子がいる場合。

この息子が東京で生活するためには、毎月少なくとも10万円の仕送りが必要。

で、親はせっせと働き、毎月10万円を預金振込みで仕送りしている。

これはセーフです。この毎月10万円は、贈与税の対象とはなりません。


さて、この仕送り額が毎月30万円であり、その息子は差額20万円を毎月貯金している場合。

あるいは、その20万円を使って株の運用などをしている場合。

これはアウトです。贈与税の対象となります。


相続税基本通達21の3−5(生活費及び教育費の取扱い)

…生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。


上記は通達なので、納税者を完全に拘束するものではありませんが、税務署の考え方はこうなんだ、という目安にはなります。



ごくまれに、相続の際、無職の子が仕送り額をせっせと貯金して、その貯金額が結構な金額になっているケースがあります。これはちょっと、どうなんでしょう・・・いくらなんでも仕送りし過ぎじゃないでしょうか?これはさすがに、贈与税なり相続税なり、何らかの形で税を課すことになりゃせんでしょうかねぇ・・・?

と、税務調査の際に調査官から言われることになるでしょう。


仕送りのし過ぎ、援助のし過ぎ、には、くれぐれも注意しましょう。



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