相続コラム

「2013年2月」のコラム

小規模宅地の改正事項に関する続きです。


前回解説した内容は、特定居住用宅地等を相続した場合の小規模宅地特例の限度面積が、従来の240平米から330平米に拡充される、というものでした。


この小規模宅地の特例は、他にも特定事業用宅地等を相続した場合の特例、というものがあります。その名の通り、個人事業者などが事業の用に供していた財産を相続し、引き続きその事業を承継する場合など一定の場合に、最大400平米まで80%減額する、というものです。


現在の制度においては、これら特定居住用宅地等(限度面積240平米)と特定事業用宅地等(限度面積400平米)を併用する場合においては、一定の制限が設けられております。


例えば、相続財産のうち


故人の居宅用宅地 200平米

故人の事業用宅地 200平米


があったとします。

この場合、上記のうち特定居住用宅地200平米につき小規模宅地の特例を使ってしまうと、


限度面積240平米−200平米=残り40平米


もう一方の事業用宅地で小規模宅地の特例を使える余地は、


40平米×5/3=66.6666・・・平米


という制限が加えられることになります。


これが、大綱の改正案によれば、上記制限が撤廃されることになりそうです。

つまり上記の例でいけば、


居住用宅地 200平米(≦限度330平米)

事業用宅地 200平米(≦限度400平米)


これら全てに対して小規模宅地の特例を最大限利用できる、ということです。


今回の内容は少し難しすぎましたね。ごめんなさい。

次回からはもっと優しい内容になります。



今回の税制改正大綱において、相続税は基本的に増税する方向で検討されておりますが、決してそればかりではありません。中には納税者にとって有利に改正する動きも一部ございます。


具体的に申し上げますと、


1.小規模宅地の特例のうち「特定居住用財産の特例」の対象要件を拡充

2.未成年者控除、障害者控除を拡充


の二点です。

今回は、上記1について解説します。


この特例は、被相続人(つまり亡くなった人)が居住していた不動産を、その配偶者または同居していた子が相続するなど一定の要件を満たした場合、その土地部分の評価額のうち、240平米までの部分を80%減額する、というものです。


具体例を挙げます。


被相続人の自宅を、その配偶者が相続するものとします。

その自宅の土地面積は300平米、土地の評価額は900万円です。


この場合、小規模宅地の特例を使うことにより、土地の評価が次の通り減額されます。


900万円×(240平米÷300平米)×80%=576万円


つまり土地の評価額900万円から576万円を減額した324万円だけが、相続税の課税対象となります。


これが今回の大綱で、330平米までこの特例を使えることになりそうです。

つまり


900万円×(300平米÷300平米)×80%=720万円


減額される額は、720万円−576万円=144万円も増加します。

つまり相続税が減ります。


そもそも、この特例の主旨は、相続人の生活の拠り所となっている自宅に対する課税負担を減らして守ってあげよう、というものです。


相続税の基礎控除額が下がることによって、相続税の課税対象となる人は急激に増加するものと思われます。そのような人達が、多大な納税負担によって自宅を手放す事態にならないよう、今回の拡充措置が検討されたのだろうと思います。


注意すべき点として、この特例は、申告することが要件となっております。

つまり、この特例を使うことによって、結果として相続税がゼロ円となるケースが多く発生すると思われますが、そのような場合であっても相続税の申告はきちんと提出する必要がある、ということです。

くれぐれもご注意ください。


まだ続きがあります。

次回をお待ちください。



現行税制においては、相続税の税率は以下の通りとなっております。


1,000万円以下の金額 10%

3,000万円以下の金額 15%

5,000万円以下の金額 20%

1億円以下の金額 30%

3億円以下の金額 40%

3億円超の金額 50%


これが、平成27年以降の相続発生分から以下の通りになる予定です。


1,000万円以下の金額 10%

3,000万円以下の金額 15%

5,000万円以下の金額 20%

1億円以下の金額 30%

2億円以下の金額 40%

3億円以下の金額 45%

6億円以下の金額 50%

6億円超の金額 55%


上記の赤字が変更になる部分です。

1億円を超えた辺りからジワジワと税率が上がり、最高税率は従来の50%から55%に跳ね上がります。


私は全身どれだけ絞ってもこんな大金は持っておりませんし、大方の皆さんも同様だと思います。

この税率改正に影響を受けるのは、ごく一部の超富裕層に限られるでしょう。


しかし、この超富裕層が、我が国の金融・経済において強い影響力を持つ層であることは間違いありません。

私のお客様など、「シンガポールに移住しようかなぁ」と冗談顔でおっしゃる方もいますが、意外と結構本気で考えてるかもしれません。


今回の大綱における富裕層への課税強化は、貧富格差是正のためにはある程度は仕方ない、という考え方が大勢を占めているのでしょうが、これで富裕層の日本国離れが加速してしまったら逆効果になる可能性があります。

そうなったらそうなったで、我が国の国税庁は非常にえげつない性格ですから、そのような日本を離れた財産に対しても税金を課すように厳しく改正するのではないかと私は思いますが・・・。


ですので、このような富裕層向け税率引き上げは、私のような一般庶民にとっても決して無関係ではない、と言えましょう。



さて、まずは相続税の基礎控除額の引き下げについてです。


現行税制では

5,000万円+相続人の数×1,000万円、となっておりますが、


大綱によれば、平成27年1月1日以後に発生する相続については

3,000万円+相続人の数×600万円、となる予定です。


民主党政権時代から何度も取り上げられ、その都度先送りになっていた事項でありますので、今更特に目新しさはありません。むしろ食傷気味、というのが私の正直な気持ちです。


この基礎控除額ですが、以下のような変遷がございました。


〜昭和62年 2,000万円+相続人の数×400万円

昭和63年〜平成3年 4,000万円+相続人の数×800万円

平成4年 4,800万円+相続人の数×950万円

平成5年〜 5,000万円+相続人の数×1,000万円


バブルで土地の価格が上昇していた頃、それにワンテンポ遅れる形で基礎控除額も引き上げ、納税者を救済してきた、という背景があります。

その後バブル崩壊、景気の悪化により土地の値段はどんどん下がっておりますので、この救済状態は事実上形骸化しており、本来ならばもっと早い段階で引き下げるのが筋であった、と言えるのでしょうが、諸々の政治的理由から先送りになっておりました。


事実、小泉政権時代にも、この引き上げ案が検討されたことがありましたが、すぐ立ち消えになっております。

それがようやく今回、実現に至る寸前まで来た、ということです。


この引き下げに伴い、相続税の課税割合、つまり亡くなった人のうち相続税が課される人の割合、がかなり上昇するであろうとこは容易に予想できます。


現在、日本全体の課税割合は、おおむね4%台前半で推移しております。

これが、改正後は6〜8%台になることが予想されております。


では北海道内はどうなるのでしょうか?

北海道の課税割合は、おおむね2%台弱です。

全国平均の半分以下です。

これは、土地の値段が低い、というのが最も大きな要因です。


事実、相続財産のうち土地の占める割合は、全国平均は約50%ですが、北海道は20%台とかなり低いです。


つまり、北海道は、全国平均に比べて、現行税制では相続税の課税対象とならない層の割合が高い、ということになります。

この層が今後は課税対象になるということですから、課税割合の上昇インパクトは、恐らく全国平均よりも高いのではないか、と予想されます。


北海道民にとって、相続税というものが、より身近な存在になる、ということです。



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