相続コラム

「相続税」のコラム

相続税の計算上、預貯金は次のとおり評価することになっております。


1.普通預金(郵貯の場合は通常貯金)

   ・・・ 相続発生日の残高


2.定期預金(郵貯の場合は定額貯金など)

   ・・・ 相続発生日の残高 + 既経過利息


上記の「既経過利息」について解説します。


既経過利息とは、「もし相続発生日に中途解約したと仮定した場合に、預金者が得られたであろう利息」のことです。

具体例を挙げます。


元本 10,000,000円

預入日 平成25年4月1日

満期日 平成26年3月31日

利率 0.1%


満期まで預入していれば、10,000,000円×1%=10,000円の利息を得られます。


が、予期せずして、この預金者が平成25年9月30日に亡くなった、とします。


もし仮に、その死亡日に定期預金を解約したとすれば。

まず、利率は0.1%とは通常なりません。

満期日前の解約なので、相応のペナルティが課されます。つまり利率が低くなります。いわゆる「解約利率」です。

解約利率は金融機関によって異なりますので各自確認する必要があります(支店窓口に聞けば教えてくれます)が、仮にこの事例では解約利率0,05%としておきましょう。


仮に解約したと仮定した場合の利息、つまり既経過利息は、

 10,000,000円 × 解約利率0,05% × 183日(4/1〜9/30)÷365日

  =2,506円

となります。


相続税の計算上、定期預金を評価する際には、この既経過利息2,506円を元本にプラスした金額、つまり10,002,506円が評価額となります。

相続発生日時点での時価を評価額とする、というのが基本的な思想だからです。


なお、これは原則として定期預金に限った話であり、普通預金などの場合は元本イコール評価額となります。普通預金の利率は非常に低いので、わざわざ面倒な計算をするまでもない、ということです。



「亡くなった父の貸金庫を開けてみたら、数千万円の札束が入ってました。どうすればよいのでしょうか?」


信じられないような話ですが、相続税申告の事案を数多くこなしていれば、こんな話は全然珍しくありません。

なぜそんな札束が入っていたのか、それは亡くなったご本人しか知る由がありません。


まずこの札束が誰に帰属する財産なのか?ということが論点となりましょうが、仮に「誰々から預かっていたものである(まあまず有り得ませんが・・・)」というような確たる証拠でもない限り、その貸金庫の名義人、つまり故人に帰属するもの=相続財産として考えるのが最も妥当でありましょう。


「この札束、なかったことにしてもらえませんか?」

と言われることも多いのですが、私は税理士の立場として


「いや、税務署の調査能力は抜群ですから。例えば貴方が貸金庫から札束を抜き出した場面は、銀行の防犯カメラにしっかりと映っていると思いますし、税務署の調査官にその映像をチェックされたらもう最悪ですよ。ここは正直に申告した方が無難です。」

と申し上げるなどして、理解して頂くようにしております。


きちんと申告して、払うもの(相続税)を払えば、残りは全て相続人のものになるのですから。



タンス預金、というものがあります。

銀行の預金口座に入金せず、自宅のタンスの中などに隠している現金のことです。


親が亡くなった後、その親の居宅から多額のタンス預金が発見された場合。

ご自身の身に覚えが無ければ、それは親の遺した財産と判断する以外にないでしょうから、相続財産の一部となりましょう。

相続税を申告する際には、当然ながら課税対象となります。


親が存命中に、このタンス預金を使って子の自宅などを建てようとする場合。

下手すると贈与税がかかりますので、注意する必要があります。

考えられる手段としては、次の二通りがあります。


1.相続時精算課税制度などを利用する方法

2.自宅のうち、そのタンス預金に相当する部分を親の名義にする。


上記のうち1は割とオーソドックスな手法ですが、その親が多額の財産を所有しており将来の相続税を節税したい場合には、上記2も十分検討の余地があります。

ただ現金を持っているだけだと、その現金の額がイコール相続財産となります。

しかしその現金を不動産に代えてしまえば、その不動産は固定資産税評価額を元に評価されますので、通常の取引価額よりもグッと下がります。

更に特定居住用宅地の小規模宅地特例を使えるようにしておけば、節税効果は更にアップします。


タンス預金を何とか上手に始末したい、とお考えの方は、是非一度ご相談下さい。



相続税の申告をすると、かなり高い確率で税務調査が入ります。

一昔前は、申告期限から3年後ぐらいに入るのが普通でした。「相続税の税務調査は、当の本人が忘れた頃にやって来る」と冗談半分で言われたものです。

が、最近はそのペースが早まっており、大体1年後ぐらいに入ることが珍しくなくなってきているようです。


ところで、税務調査というものは、年がら年中あるわけではありません。

まず税務署の異動が、毎年7月1日付で行われます。

その時点で全ての仕事がシャッフルされます。

つまり業務の引き継ぎと言うものが、原則ありません。


そして7月中に調査先の選定が行われます。

重要な事案、つまり「ここを調査すれば税金をガッポリ取れそうだな」「何か隠し事をしてそうだな」という事案から順次調査が開始されます。

ですから8月に入る調査は、まず税務署側にとっては最も気合いの入った調査です。

そして9月、10月・・・と経過するごとに、段々と重要度が低くなっていきます。


そして12月末で、一旦調査を打ち切ります。

つまり12月末までに、何らかの結論を出す、もっとぶっちゃけて言いますと、納税者に修正申告を提出させる、ということです。


このブログ記事を税務署の調査官が読んでないことを祈りつつ書きますが、調査官は12月末が近づくにつれて、さっさと調査を終わらせようとします。つまり「これは見逃しますから、これだけ認めて修正してくれませんか?」というような駆け引きが行われます。


このタイムスケジュールを理解しておけば、納税者側の心理はだいぶ軽くなると思います。


そして年明け、1月〜3月はほとんど調査がありません。

個人確定申告のシーズンなので、皆それどころじゃないからです。


4月からまたボチボチ調査が入りますが、上記12月末の件と同様、6月末までに打ち切られます。

ですので4月以降の調査は、比較的楽な調査である、と言えます。


以上が一般的な税務調査のシーズン、タイムスケジュールに関するお話ですが、何事も例外というものがあります。

遺産額がとても大きな案件、かなり悪質なことをしている(多額の財産を隠しているなど)可能性の高い

案件は、それを専門にこなす部署がありまして、その部署は上記スケジュールは一切関係ありません。12月末や6月末を超えて調査を平気で続行します。

いわゆる「特官(とっかん)」などと呼ばれる部署です。私も特官部署の調査に立ち会ったことはありますが、さすがに調査官の面構えは結構怖いです。

でも、自分自身が一切悪いことをした覚えがない、潔白であるならば、正々堂々と対応しましょう。お役人が100%正しいとは限りませんから、あくまでも毅然とした対応をしましょう。



立木の評価について若干補足します。


山林などに生えている立木の評価は、財産評価基本通達において次の通り評価することになっております。


11ha当たりの標準価額×地味級×立木度×地理級×地積=評価額


まず標準価額ですが、国税庁が各都道府県ごとに作成しております。

具体的には、樹木の種類(から松、杉等、とど松、雑木)及びその樹齢により、1ヘクタールあたりの価額が定められております。

この標準価額が、まずは評価額の基礎となります。


続いて地味級ですが、これは要するに「地面の味(あじ)」、つまりその木が生えている地面がどれだけ肥えているか、ということです。

そこに生えている樹木の種類、及びその太さにより、三段階に分けて評価されます。つまり太ければ太いほど、肥沃な土地である(=評価額は高くなる)ということになります。


そして立木度は、その場所にどれだけ木が密集しているかどうか、です。

密集しているほど評価は高くなります。


地理級は、その名の通り「地の利」です。

つまり伐採した木を運び出して、最寄りの製材所(または木材市場)に持ち込むまでの距離が近いほど高い評価になります。

この地理級は、さらに二つの要素に分かれております。

まず「小出し距離」。これは山のふもとの集積場までの距離によります。

次に「小運搬距離」。これは集積場から製材所までの距離によります。


上記の通り、立木は色々な要素を加味して評価されます。

木を大事にする文化を持つ日本ならでは、ということでしょうか。



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