相続コラム

「相続対策」のコラム

まず管理会社方式について説明します。

ご相談にいらっしゃる大抵の方(ほぼ99%以上)は、まずこの方式を想定してらっしゃいます。

つまり個人所有の賃貸アパート等を管理する名目で、その手数料を受け取る方式です。

一時期、この管理会社方式が大流行りし、多くの地主さん達が管理会社を設立しまくった時期があります。
が、そのブームはすぐに下火になりました。
税務署の調査が入り、その多くが否認されてしまったからです。

否認された理由の大部分は、

実際に管理業務をしている実態がみられない

これに尽きます。

アパートの管理といっても、そう簡単なことではありません。
入居者探し、
入居者の審査・契約・敷金預り、
老朽化した設備のメンテナンス、
清掃、
退去時の雑処理、etc...

これらの実務を素人が行うのは並大抵ではありません。
プロの業者に全てお任せしているのが実態だろうと思います。

じゃあ、あなたが設立した管理会社は、一体何をやっているんですか?

と税務署に突っ込まれてしまうと、

「いや、実は何もしてません」

と弁明する以外にない地主さんが多かったようです。


また、地主から徴収する管理料も大きな問題となったようです。

プロの業者であれば、だいたい受取賃料の数パーセントが相場ですが、その相場を無視してべらぼうに高い管理料を徴収する事例が多かったようです。
例えば20〜30%の管理料を徴収するのであれば、それにふさわしい業務を本当にしているのか?ということになりますが、実際は大したことをしていない・・・、となれば、税務署としては否認せざるを得ないということになりましょう。


というような経緯がありましたので、今ではこの管理会社方式の活用は、かなり下火になっているようです。


不動産賃貸物件をたくさん所有してらっしゃるお客様から

「法人を上手く使って節税とかできないか?」

というご相談をよく受けます。

 

ですので、

今年2月の大東建託様セミナーでは

その法人成りスキームについて相当時間を割いて解説したところ

かなり好評を得ましたので、その概要を簡単に書いてみたいと思います。

 

法人成りを使ったスキームは、大きく次の三つに分かれます。

 

1.管理会社スキーム

2.一括借り上げスキーム

3.不動産所有スキーム

 

一般の方が通常思い浮かべるのは、まず1でしょう。

法人が不動産物件を管理し、管理料として毎月徴収する方法です。

でもこの方式は、事実上かなり難しいです。

何故かといいますと、実際には全く管理せず、

何もしていない(できない)ケースが非常に多いからです。

 

不動産の管理は、素人が簡単に出来るものではありません。

入居者探し、入居者のクレーム対応、修繕管理、その他諸々・・・。

これらのノウハウを持たない地主さんが、

いきなり法人を設立して同じことをやれるでしょうか?

結局できずに、プロの管理会社に丸投げしてしまうでしょう。

 

そうなりますと、税務調査で

「全然何も管理業務やってないじゃないですか」

と調査官に突っ込まれ、その管理料を否認されてしまいます。

 

ですので、この管理会社スキームは一時期かなり流行りましたが、

今は全国的に下火状態ではないかと思われます。

 

続いて2の一括借り上げスキームですが、

これは法人側にとって大きなリスクを抱えてしまうことになります。

つまり空室リスクです。

地主さんから一括借り上げするのですから、

たとえその部屋が空室であっても家賃を支払わねばなりません。

空室率が高いと、たちまち法人の資金繰りはショートしてしまいます。

ですので、これも素人の方には正直あまりお勧めできません。

 

となると、残るのは3の所有スキームです。

つまり法人が不動産を所有してしまうのです。

今はこの方式が最もトレンドではないかと思われます。

土地は地主個人の名義にしておき、

建物(+借金)を法人の名義にする。

法人にすればバラエティに富んだ節税対策を検討することができますし、

その法人の株主を子や孫にしておけば、

相続を経ずに次世代・次々世代に財産を移転できます。

ただし借金については相手(金融機関)のある話ですので、

金融機関と事前にしっかりと協議する必要があります。

 

また機会があれば、

この所有スキームについてもう少し詳しく解説したいと思います。



地主様相続対策をご提案する際に、

まずその地主様が所有する全不動産の活用状況をチェックするのですが、

必ずと言っていいほど存在するのが貸宅地です。

 

要するに、読んで字のごとく

「他人に貸しており、かつ他人がその土地の上に自宅などを建てている」

ということなのですが、これが非常に厄介な代物です。

 

何が厄介かと言いますと、

とにかく借りている側の法的権利がとてつもなく強い

退去して貰おうにも莫大な退去費用(借地権の買い取り費用)を

支払わねばなりませんし、賃料の値上げもそう簡単にはいきません。

 

よくあるケースとして、

数十年以上前、つまり先代の頃からず〜っと腐れ縁で貸し続けており、

お互いの交流もほとんど無く、かつ賃貸料も据え置きのままタダ同然、

本当は新しい賃貸アパートを建てたいので退去して欲しいのだが、

借地人はかなり高齢で、無理に退去してもらうのも気が引けるし、

そうこう悩んでいる間にその借地人が無くなり、

借地権はその相続人(息子)へ相続され、人間関係は益々疎遠に・・・

 

こうなってしまうと、もう大変です。

このような問題は先送りせず、早めに対処しましょう。

 

所有財産は不動産ばかりで、現金預金の残高が少ない、

という地主様が非常に多いです。

今後発生するであろう相続税を支払う財源が全然足りない、

という方もよく見受けられます。

 

そのような場合の事前対策として、

例えば所有不動産の一部売却

あるいは賃貸物件建築等の収益による現金獲得&評価減

など色々とご提案するのですが、

その際に必ず障害となるのが、貸宅地です。

 

再度申し上げます。

問題は先送りせず、早めに対処しましょう。

その厄介な問題を次の世代に残さず、自らの代で解決するよう善処しましょう。



将来発生するであろう相続に備えて、

生前に出来るだけの対策を講じるのはとても有意義なことです。

 

ここで絶対に忘れてはならないことがあります。

相続対策の優先順位です。

 

第一順位:分割対策

       (誰に、何を、いくら分けるのか?)

第二順位:納税対策

       (相続税はいくら発生するのか?現金で一括納付できるか?)

第三順位:節税対策

       (相続税額を少なくすることは可能か?)

 

この順位を間違えると、トンチンカンな対策になってしまいます。

 

例えば、賃貸マンションの購入。

手持ち現金で賃貸マンションを購入することは、

確かに(短期的な)節税対策としては有効です。

しかし、それを実施することによって、

将来発生するであろう相続税の納税資金が足りなくなってしまったり、

又は複数の相続人に対して公平な分割をしにくくなってしまう可能性もあります。

 

何よりもまず優先して考えるべきは、分割対策です。

相続人が皆納得できるよう、キチンと分割できる財産構成にすることです。

 

次に考えるべきは、納税対策です。

分割対策実施後の財産構成で、無理なく相続税を支払えるようにすることです。

 

節税対策は、優先順位としては最下段です。

余力があったらやる、という程度の認識で充分。無理をしてはいけません。



遺留分とは、

相続人が「最低でもこれだけの相続財産は取得できる」と、

法律で保証されている権利のことです。

 

例えば、相続人が配偶者と子1人である場合。

生前、夫婦仲が冷めきっており、主人は愛人と同棲。

その主人は、「私の全財産を愛人に遺贈する」という遺言を残し、死去。

こんなケースは実際よくある話です。

正式な相続人である配偶者と子はたまったもんじゃありませんので、

配偶者と子は、遺留分として、それぞれ全財産の4分の1ずつを

その愛人に対して請求し、取得することができます。

 

ところで、

子もいない、父母も既に死去している場合、

その亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となる

(配偶者がいる場合は、その配偶者+兄弟姉妹)のですが、

兄弟姉妹には遺留分ありません

弊所にいらっしゃる皆様のご相談内容として、

このケースに関するご相談が非常に多いです。

 

つまり、

兄弟姉妹が相続人であるパターンで、

「配偶者に全財産を渡す、という遺言があり、我々兄弟が財産を一銭も

 貰えない。何とかならないのか?」

というようなご質問です。

 

(これが一番よくあるパターンですが、 自らの死後における配偶者の生活を思いやる故人の想いは至極当然ですので、私は何とかその相談者(兄弟姉妹)にその想いを理解して頂くことを第一に考えます)

 

もっとすごいのは、

全くの他人であるご近所の世話人に全財産を渡す、という遺言です。

そんな内容の遺言もたまにあります。

兄弟姉妹には遺留分がありませんので、

その遺言が法的に有効である限り、どうしようもない、と

しかアドバイスの仕様がありません。

 

もちろん、遺言に記載してない範囲の財産があれば話は別です。

遺言の記載内容が全財産を網羅していない場合、

例えば自宅の土地建物だけを妻に渡す、とだけ記載し、

他財産については一切言及してない場合には、

その自宅以外の財産は兄弟姉妹を含めて遺産分割協議の対象となります。

 

いずれにしても、

自らの死後においてゴタゴタが生じるのは、その故人にとっても本意ではないでしょうから、

例えば遺言に自身の想いを記載する(付言)、

兄弟姉妹の代表お一人に祭祀をお願いし、その費用分だけでも相続させる、

行政書士などの専門家を遺言執行者にしてスムーズな執行を図る、

などの対策をあらかじめ検討しておくべきでしょう。

 

死後のトラブルを防ぐ、または減らすことができるのは、

他でもない、故人となるであろう貴方ご自身の行動如何にかかっております。



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