相続コラム

「遺言」のコラム

最近、また遺言作成のご相談が増えております。


このようなケースに該当する場合は、絶対に遺言を作っておいた方がいい!

という事例を、数回に分けてご紹介します。


まず第一回目は、相続人同士が疎遠なケースです。

相続人といえば、通常は配偶者、そして子供同士です。

(子がいないケース、つまり父母や兄弟姉妹が相続人であるケースはひとまず置いておきます)


そんな、血を分けた配偶者・子供同士で疎遠なケースなんてあるの?

とお思いの方もいらっしゃるでしょうが、実はよくあるケースです。


例えば最もよくあるパターンの一つは、

その人が離婚・再婚しており、それぞれ前妻の子・後妻の子が存在する、というケースです。


どこぞの「不倫は文化だ!」とのたまうトレンディ(死語ですね…)俳優の一族は皆仲が良いらしいですが、普通は前妻の子と後妻の子は全く接点が無い、というのがごく当然でありましょう。


そのような場合、ご本人が亡くなってしまうと、普段全く接点のない前妻の子・後妻の子が顔を付き合わせて遺産分割協議をしなければなりません。

どう考えても、居心地の良い空気が蔓延するとは思えません。

弁護士を代理とすることも可能ですが、とてつもない費用がかかります。


そこで、あらかじめ遺言を作っておくのです。

遺言には、全ての財産を網羅し、それぞれの分割方法を指定しておきます。

そうすれば、自らの死後、彼らが会って気まずい雰囲気の中、重たい話し合いをする必要が無くなります。


遺言において、遺言執行者は必ず選任しておきましょう。

そうすれば、遺産分割の手続きは執行者が全て行うことが出来ます。


まれに、というか、しょっちゅう、身内を執行者に選任するケースが見られます。

相続手続きに手慣れた身内なんて、滅多におりません。

その身内にしてみれば、(最初は張り切るかもしれませんが、結果として)いい迷惑です。

必ず、弁護士や司法書士、行政書士など相続手続きに熟練したプロを執行者にしておきましょう。


なお、言うまでもありませんが、少なくとも全相続人の遺留分を侵害しない内容の遺言にすること、そして全相続人が納得出来る内容の分割方法にしておくこと。

後者は非常に難しく、100%完璧なものを作るのは不可能に近いかもしれませんが、出来る限り100%に近づけるよう知恵を絞りましょう。



遺言で


「Aさんに財産を○○円相続させる(または「遺贈する」)」


と記載されている場合において、そのAさんが「私は受け取りたくありません」と拒否することは可能でしょうか?

この回答は、少々ややこしいです。


1.「相続させる」旨の遺言である場合

つまり、遺言者の相続人に財産を相続させる旨の遺言である場合です。

これは遺言者が、生前に遺産分割を指定しているものでありますので、相続人が、その遺言で指定された相続分だけを放棄することは出来ません。

素直にその財産を受け取るか、あるいは相続の権利そのものを全て放棄するか(つまり相続放棄です)、のいずれかを選択するしかありません。


2.「遺贈する」旨の遺言である場

これは、相続人以外の人に財産を渡す場合の方法としてよく使われます。

この場合は、その遺贈財産のみ放棄することが可能です。

相続放棄と違い、特に裁判所への手続き等は必要ありません。口頭での放棄も法律上有効ではありましょうが、後々のトラブルを防ぐために書面を交わしておくべきでしょう。


なお上記2の場合、その放棄された財産は、各相続人の相続財産となりますので、遺産分割協議をする必要があります。


言うまでもありませんが、もらう側の人に「こんな財産いらないよ」と思われないよう、遺言の内容はしっかりと練りに練るべきです。



公正証書遺言などを作成する際、その文言内において遺言の執行者を指定しておきます。

通常は、我々のような専門家が遺言作成業務を請け負う場合は、我々が当然そのまま執行者になることが多いです。


しかし、ごくまれに、執行者が指定されていない遺言も見られます。

そのような場合、預貯金解約等の執行手続きはどうなるのでしょうか?


結論から申し上げますと、執行者が選任されている場合ほど簡単ではありませんが、何とかやることは出来ます(もちろん各金融機関の取り扱いが若干異なりますので何とも言えませんが…)。


1.執行者が指定されている場合

各金融機関等で、原則その執行者の印鑑証明書、及び署名捺印で、ほぼ全ての手続きをすることが可能です。

機関によって若干異なりますが、プラス遺言者の戸籍(または除籍)謄本、その財産を受け取る相続人または受遺者の住民票などが必要となります。


2.執行者が指定されていない場合

その財産を受け取るものと指定されている相続人または受遺者が、自ら金融機関等に出向いて手続きを行うことになります。

もちろん、我々のような専門家が委任状をもらって代行手続きをすることも可能です。


ここで実務上厄介なのが、自筆証書遺言の場合です。

自筆証書は遺言者本人が作成したものなので、大変失礼ながら、その文面が不明瞭であることが多く、「結局この財産は誰にどう分ければいいんだろう?」と解釈に困ることが多々あります。

そのような場合は、金融機関もそう簡単には手続きに応じてくれず、結局は全相続人の印鑑証明、署名捺印を貰わなければ解約できない、ということも有り得ます。


ご自身亡き後の手続きをスムーズに進めて欲しい、というお気持ちは誰しもお持ちであろうと思います。

是非、公正証書遺言で、かつ弁護士、司法書士、行政書士などの専門家が執行する旨を記載して頂ければ、と切に願います。



Aさんが、生前に「Bさんに現金100万円を相続させる(遺贈する)」という内容の遺言を作成した、とします。


Aさんが先に亡くなった場合は、特に問題なくこの遺言が執行されるのですが、もしBさんが先に亡くなっていた場合は一体どうなるのでしょうか?


お詳しい人であれば、「Bさんの代襲相続人(つまりBさんの子など)が代わりに受け取るんじゃないの?」と思うでしょう。

しかし、そうではありません。

このような場合、代襲という概念は適用されません。


Bさんが受け取るはずだった財産は、遺言の対象外となり、各相続人で遺産分割協議をすることになります。


面倒ですね。


この対処法として、例えば遺言に次のような文言を追加で記載する方法があります。


「私よりも先にBさんが亡くなった場合には、その財産はBさんの子であるCさんに相続させる」


このように、遺言というものは、起こり得る様々なケースに対処できるよう知恵を絞る必要があります。

安易な気持ちで書いてしまうと、遺族に余計な手間をかけさせてしまうこともあります。


実務上、自筆証書遺言でこのようなケースに遭遇することが多いです。

専門家に相談のうえ、文面を練りに練ったうえで公正証書遺言にするのが最も無難です。



「先日亡くなった親が自筆証書遺言を残していた」


というご相談は結構よくあります。


自筆証書遺言は、その名の通り、本人が自筆で(ワープロはダメ)作成する遺言のことです。

誰にも知られず、お手軽に作成できる、というメリットは確かにあります。


しかしその一方で、デメリットの方が多いのも事実です。


第一に、遺言者の死後、遺族の誰かが、その遺言書を勝手に開封してしまうケースがあります。

自筆証書遺言は、発見された後すみやかに、裁判所で検認の手続きを申し立てる必要があります。原則として、開封してはなりません。その遺言内容が改ざんされる恐れがあるからです。勝手に開封すると5万円以下の罰金を取られる可能性があります。


しかし、その遺族が上記の決まり事を知らなかった場合、あるいは知っていたとしても、その遺言内容に不満を抱き(「俺の取り分が少ない!」など)、裁判所に申し立てず、そのまま相続人間の争いに移行してしまうケースが散見されます。


第二に、その遺言の文面が不明瞭で、どう解釈すればよいか分からない、というケースがあります。

例えば、


「○○銀行○○支店の定期預金1000万円を、息子Aに相続させる。」


と書かれていた、としましょう。

ところが、その定期預金は1年ごとの自動更新で、かつ利息を元本に都度組み入れるタイプの商品であったために、遺言者が亡くなった時点では、その定期預金の元本は1000万円ではなく、若干の利息が付加された金額であった。


さあ、どう解釈すればよいでしょうか。

利息分も含めた金額全てを、息子Aが相続するのか。

それとも利息分を除いた1000万円だけを息子Aが相続するのか。

このような細かい部分が、意外と相続争いのタネになりやすいものです。


他にもいくつかデメリットはありますが、上記二つを例示するだけで十分でしょう。

この二つだけで、泥沼状態になり、せっかく親が遺した遺言書はいつまでも宙に浮いたまま、という状態に陥ってしまうのです。


これらのデメリットを未然に予防するためには、自筆証書遺言ではなく、公正証書遺言にすべきだと思います。

公正証書遺言は、確かに「公証役場を通すので面倒だ」「費用がかかる」「証人二名が必要だ」というデメリットはありますが、しかし


・裁判所の検認を必要としない(すぐに遺言執行することが可能)

・公証人が作成するので、簡潔明瞭な文面にできる(遺族間で解釈が分かれない)


という、有り余るメリットがあります。


自筆証書遺言を作成済みの方は、ぜひ公正証書遺言に作り直すよう検討しましょう。



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