相続コラム

「2011年7月」のコラム

遺留分とは、

相続人が「最低でもこれだけの相続財産は取得できる」と、

法律で保証されている権利のことです。

 

例えば、相続人が配偶者と子1人である場合。

生前、夫婦仲が冷めきっており、主人は愛人と同棲。

その主人は、「私の全財産を愛人に遺贈する」という遺言を残し、死去。

こんなケースは実際よくある話です。

正式な相続人である配偶者と子はたまったもんじゃありませんので、

配偶者と子は、遺留分として、それぞれ全財産の4分の1ずつを

その愛人に対して請求し、取得することができます。

 

ところで、

子もいない、父母も既に死去している場合、

その亡くなった人の兄弟姉妹が相続人となる

(配偶者がいる場合は、その配偶者+兄弟姉妹)のですが、

兄弟姉妹には遺留分ありません

弊所にいらっしゃる皆様のご相談内容として、

このケースに関するご相談が非常に多いです。

 

つまり、

兄弟姉妹が相続人であるパターンで、

「配偶者に全財産を渡す、という遺言があり、我々兄弟が財産を一銭も

 貰えない。何とかならないのか?」

というようなご質問です。

 

(これが一番よくあるパターンですが、 自らの死後における配偶者の生活を思いやる故人の想いは至極当然ですので、私は何とかその相談者(兄弟姉妹)にその想いを理解して頂くことを第一に考えます)

 

もっとすごいのは、

全くの他人であるご近所の世話人に全財産を渡す、という遺言です。

そんな内容の遺言もたまにあります。

兄弟姉妹には遺留分がありませんので、

その遺言が法的に有効である限り、どうしようもない、と

しかアドバイスの仕様がありません。

 

もちろん、遺言に記載してない範囲の財産があれば話は別です。

遺言の記載内容が全財産を網羅していない場合、

例えば自宅の土地建物だけを妻に渡す、とだけ記載し、

他財産については一切言及してない場合には、

その自宅以外の財産は兄弟姉妹を含めて遺産分割協議の対象となります。

 

いずれにしても、

自らの死後においてゴタゴタが生じるのは、その故人にとっても本意ではないでしょうから、

例えば遺言に自身の想いを記載する(付言)、

兄弟姉妹の代表お一人に祭祀をお願いし、その費用分だけでも相続させる、

行政書士などの専門家を遺言執行者にしてスムーズな執行を図る、

などの対策をあらかじめ検討しておくべきでしょう。

 

死後のトラブルを防ぐ、または減らすことができるのは、

他でもない、故人となるであろう貴方ご自身の行動如何にかかっております。



このような場合には必ず遺言を作成しておくべき、

という典型的なパターンをご紹介します。

 

1.推定相続人配偶者兄弟姉妹である場合

 推定相続人とは、

  「将来自分が亡くなったときに、相続人となるであろう人たち」

 のことです。

 子供がいない、かつ父母が先に亡くなっている夫婦の場合、

 通常、推定相続人はその配偶者と兄弟姉妹となります。

 配偶者に全ての財産を渡してあげたい、と思うのが普通でしょう。

 しかしそのまま放っておくと兄弟姉妹にも相続権がありますので、

 遺産分割協議の際に揉める可能性があります。

 

 ですので、「財産全てを配偶者に相続させる」

 という内容の遺言を残しておけば、

 兄弟姉妹には遺留分がありませんので、

 万事滞りなく配偶者に全ての財産を渡すことが可能となります。

 

2.相続人以外の人に財産を渡したい場合

 例えば、

 身の回りの世話をよくしてくれた義理の妹などに財産をあげたい場合、

 その旨を記載した遺言を作成しておくことができます。

 ただし一つだけ注意してください。

 

 「他の推定相続人の遺留分侵害しないこと」

 これを破ってしまうと、相続発生後は間違いなく戦争勃発です。

 義理の妹さんに余計な気苦労を掛けてしまい、好意が水の泡になります。

 遺贈する金額は、ほんの気持ち程度にしておくこと、

 更に、相続人に対する付言をしっかり記載しておくことをお奨めします。

 

3.先祖代々の土地、自社株式など重要な財産を長子に残したい場合

 別に長子でなくてもよいのですが、

 年功序列で長子が引き継ぐのが最も多いパターンだろうと思います。

 それら重要な財産については長子に相続させる旨の遺言を残すと共に、

 他の相続人が不公平感を抱かないよう、最大限の努力を払いましょう。

 自分を被保険者とする死亡保険契約をできるだけ沢山加入しておき、

 保険金の受取人を、その長子にしておきましょう。

 その長子は、その重要財産を受け取る見返りとして、

 他の相続人に対して相当額の代償金を支払う必要が生じる場合、

 支払原資として、その保険金を活用できます。

 

 生命保険契約はぜひ今一度見直しておきましょう。




子も親もなく、将来自分が亡くなった際の相続人が妻と兄弟姉妹だけの場合は、

その兄弟姉妹に遺留分はありませんので、

「財産は全て妻へ」という遺言を作っておいても特に支障はありませんし、

むしろ積極的にそうすべきでしょう。

問題なのは、子が複数いる場合などです。

一番面倒をみてくれた子だけに財産をたくさん残したい、

という気持ちは、私も一人の人間として非常によく理解できるのですが、

これが後々トラブルの原因となります。

 

他の子の遺留分を侵害する内容の遺言を残してしまうと、

相続発生の際、その他の子が99%怒り、兄弟喧嘩が始まります。

 

ですので、少なくとも

全ての相続人に最低ラインの遺留分を保証する内容の

遺言を作成することを強くお勧めしております。

 

そのためには、遺言の内容を考える際、

1.自分が亡くなった際に相続人となる人 (推定相続人といいます)

2.自分の財産全ての状況、及びそれぞれの時価

この二つは完全に把握した上で打ち合わせすることが必要です。




公正証書遺言に関する初回打合せにつきましては、

次に掲げる書類を持参して頂けるとお話がスムーズに進みます。

 

1.所有する不動産「固定資産税納税通知書」

   … 不動産の内容及び時価を確認するために必要です。


2.銀行預貯金通帳・証書 全て

   … 預貯金の内容及び残高を確認するために必要です。

     あらかじめ全て記帳してきて下さい。

 

3.その他所有する財産を確認できるもの

   (1)証券会社と取引している場合

     … 直近の取引残高報告書

   (2)中小会社などを経営している場合

     … 直近3期分の決算書類一式

   (3)その他

     … ゴルフ会員権、自家用車など確認できる書類

上記全て、ご本人様の財産状況を確認するための書類です。

推定相続人などの状況につきましては当日ヒアリングさせて頂きます。



自筆証書遺言は、

 

1.遺言内容を誰にも知られず作成できる

2.自宅などで簡単かつお手軽に作成できる

3.費用が一切かからない

 

というメリットが一方で、

 

1.民法で厳格に定められた様式に少しでもそぐわないと無効となる

   (例 : 全文自筆(ワープロや代筆は不可)、日付、署名捺印など)

2.相続発生後、その有効性について遺族間で争われることが多い

   (例 : 本当に本人が正常な精神状態で書いたのか?など)

3.生存中に失くしたり、死後発見されないことも多い

 

というデメリットもございます。

諸刃の剣、と言ってもよいでしょう。

一例を挙げます。

相続発生後、その遺言の内容に納得のいかないご遺族の一人が

「これ本当に親父が書いたのか?誰かの代筆じゃないのか?」

と主張したとします。

もし代筆であれば、その遺言は法的に無効となり、拘束力を失います。

このような場合に判定基準となるのが、筆跡鑑定です。

被相続人が生前に書いた日記や年賀状などが、鑑定の材料となります。

 

ここで問題となるのが、主に次の二点。

まず一点目。

今はパソコン&ワープロの時代なので、自筆の鑑定材料が少ないこと。

今どきの日本人は、年賀状の宛名をパソコンソフトで印刷作成します。

せいぜい裏面に「来年もよろしく」と自署するぐらいではないでしょうか。

紙に鉛筆で自分の文字を書く、という習慣が極端に減ってきているのです。

 

そして二点目。

若干失礼をあえて承知で書かせて頂きますと、

遺言はお年を召されてから作成されることが多いので、

お若い時分と比べて、

手が震えるなどの理由で、筆跡が変化していることが多いです。

ですから、お若い時分の筆跡を持ち出されて

「ほら、筆跡が全然違うだろう!」と

証言されてしまうと、反論するのが難しくなってしまうことがあります。

 

上記にご留意のうえ、

自筆証書遺言を作成される際には、

筆跡鑑定の材料をしっかりと残しておくことが必要です。



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