相続コラム

「2011年7月」のコラム

そもそも「贈与」とは一体何でしょうか?

 

民法第549条において、その定義がなされております。

 

贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、

相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

 

つまり、

贈与する側のAさんが「あなたにコレをタダであげましょう」と意思表示し、

かつ

受け取る側のBさんが「わ〜い、どうもありがとうございます」と受諾する。

Aさん(贈与者)とBさん(受贈者)、双方意思疎通が必要なのです。

 

よくありがちなケースとして、例えば・・・

ご高齢のCさんが、可愛いお孫Dさん名義の預金口座を内緒で開設しました。

Cさんは、ご自身の年金収入の一部を、そのD名義預金にせっせと入金。

Dさんはその事実を一切知らず、Cさんの相続時に初めてそれを知りました。

 

・・・このケースは、

そもそもCさんが「意思を表示」しておりませんし、

当然Dさん(受贈者)も「受諾」しておりませんから、

法的に贈与契約は成立しておりません。

ですから、Cさんが生前に積み立てたD名義預金は、

Dさんの財産とはならず、

Cさんの財産ということで遺産分割の対象になるのです。

 

「そんなバカな。名義はDなのだから、Dの財産じゃないのか。」

と思われる方もいらっしゃるでしょうが、

形式上の名義(D)よりも、実質上の名義(C)が重要なのです。

 

このように、

形式上の名義と実質上の名義が異なる財産のことを

名義財産

といいます。

 

その財産が預金ならば「名義預金」、株式ならば「名義株」です。

 

贈与契約を有効に成立させるためには、

上記の民法条文をしっかりと踏まえた上で、双方の意思疎通を行い、

その痕跡を残すために、書面で「贈与契約書」を作成すべきでしょう。

ただし、贈与税が課されることがありますので、事前に充分ご検討下さい。



相続が発生して数ヵ月後、

ご遺族の元に、税務署から

「相続についてのお尋ね」

という書類が郵送されることがあります。

 

税務署では、

毎年提出される確定申告書などの情報を元に、

「この人は財産を相当持ってそうだなぁ」

という情報を掴んでおります。

 

人が死亡して市町村役場に死亡届が提出されると、

その市町村役場から税務署に死亡者情報が送られます。

税務署は、その情報の中から「財産を持ってそうな人」をピックアップし、

そのご遺族に対して

「相続税が発生するのであれば、ちゃんと申告して納めて下さいね」

という警告を込めて、お尋ね書を発送するのです。

 

このお尋ね書の提出は任意であり、強制義務ではありません。

従って、提出しなくても特に罰則はありません。

「なんだか怖いので提出したくない」と思う方もいらっしゃるでしょう。

しかし、税務署は国家行政機関ですので、

その気になれば銀行等に出向いて死亡者の財産を強制調査することもできます。

隠し事をしてあらぬ疑いをかけられるのは本意ではありませんし、

このような質問状にはできるだけ進んで協力すべきでしょう。

やましいことを一切せず、正しい回答をすれば全く問題はないのです。

 

お尋ね書には、

お亡くなりになった方が有していた財産の一覧や、

相続人の状況などを記載します。

ですから、相続発生後すみやかに

「戸籍収集による相続人の確定」「財産目録の作成」「財産の時価評価」

などをキチンと行っていれば、容易に記載することができます。

 

一般の方々にとって、税務署は非常に堅苦しく怖いイメージがありますので、

いきなり税務署から書類が郵送されるとビックリされる方が多いでしょう。

しかし、恐れることはありません。

慌てず、騒がず、真実を記載すれば決して怖いものではありません。

どうぞお気軽に、我々専門家にご相談下さい。



一定規模以上(※)のアパート経営などを行う地主様の節税対策としては、

例えば次のようなものがあります。

  ※ 一軒家ごと貸す場合は5棟以上、一部屋ごと貸す場合は10室以上

 

1.青色申告の実施による最大65万円特別控除

2.配偶者に対する青色事業専従者給与の支給

3.小規模企業共済 の加入

4.国民年金基金 の加入

 

具体的に数字を掲げますと、例えば

今まで白色申告で全く何の対策も行ってこなかった地主様が

 ・青色申告の申請書を提出して

 ・奥様に毎月8万円の専従者給与を支払

 ・小規模共済に加入して毎月7万円の掛金を支払

 ・国民年金基金に加入して毎月6万8千円の掛金を支払うと

 

所得税と住民税、合わせて

最低48万円から最高163万円まで節税することが可能です。

 

ちなみに上記4つの節税対策は、

ご本人にとって全く何のデメリットも無い、最上の策です。

中古のベンツを買うだの何だのと

道化師的なアクロバット節税術の本が話題になったりしておりますが、

節税対策とは本来、

一見地味に思える基本策をしっかりと抜かりなく行うべきものであって、

納税負担を圧縮して得た余力を以て、堅実な経営基盤を構築したり、

あるいは更なる投資に踏み出すための手段たるべきものです。

 

節税対策は「手段」であって、「目的」ではありません。

税金を支払いたくないがためだけに会社の利益をガクッと減らす、

或いは赤字にするのは、本末転倒というべきです。

アクロバット飛行の如き奇策妙策は、少なくとも私はとても推奨できません。

 

話がちょっと脇道にそれてしまいました。

不動産オーナー様、

まずは上記4つの節税によって得られる余剰資金を少しだけ、

顧問税理士を雇うことに向けてみませんか?

事業経営の更なる磨き上げ、後継者への事業承継対策、

財産全体・ご家族全体を見据えた相続対策など、

もっと踏み込んだアドバイスが聞けるかもしれませんよ!



「将来の相続税を減らしたい」というご相談を最近よく受けます。

オーソドックスな手法としては、まず次の三つが考えられます。

 

1.財産の価値減らす

2.生命保険に加入して相続税の非課税枠(一人当たり500万円)を活用する

3.生前贈与を活用する

 

今回は上記のうち3の生前贈与、特に暦年贈与についてお話します。

暦年贈与基礎控除額は年間110万円しかありませんので、

あまり大きな節税効果は無い、と思ってしまいがちですが、

コツコツ長く続けると結構大きな効果が得られます。

 

ここで一つ、重要なポイントをお知らせします。

基礎控除額(110万円)の範囲内で贈与税がかからないように贈与する、

と考えてしまいがちですが、

あえて多少の贈与税を支払い、たくさん贈与してしまう方が有利な場合があります。

 

具体例。

このままだと将来発生する相続税の税率が30%になりそうだ。

ということは、贈与税率が30%未満に収まるようガンガン生前贈与すれば、

このまま放置して30%の相続税を妻や子に負担させるよりもお得です。

 

子が二人いれば、それぞれに毎年400万円ずつ贈与します。

贈与税額は (400万円−110万円)×15%−10万円=335,000円

「400万円もらって35万円も贈与税を払うの?」と思うかもしれませんが、

このまま放置すると、将来もっと高い税率の相続税を払うことになります。

相続税を安く前払いするんだ、と割り切ってしまえばよいのです。

(ただ人間というものは、現実その割り切りが意外と難しいのですが・・・)

 

子二人に毎年400万円の贈与を10年間続ければ、

 400万円×2名×10年=8千万円(!!!)

相続財産を8千万円も減らすことができますし、

かつ相続財産が減れば減るだけ、相続税の税率も下がります。

 

上記を踏まえて簡単にシミュレーションした上で、

毎年コツコツと生前贈与するプランを立ててみましょう。

意外と高い効果を得られることが分かると思いますよ。



相続時精算課税制度の注意点について、です。

 

まず一点目

Aさん(父)からBさん(息子)に対して行った贈与につき、

相続時精算課税制度の適用を受けた場合、

今後BさんがAさんから受ける贈与については、

暦年課税制度 を利用することはできません

(ただしBさんが他の人から受ける贈与については暦年課税制度を利用できます

 

相続時精算課税制度の特別控除額2,500万円をフル活用するのか、

それとも暦年課税制度の控除額110万円を毎年延々と活用するのか、

慎重に検討したうえで選択する必要があります。

 

そして二点目

相続時精算課税制度の適用を受けた贈与の全ては、

将来Aさんが亡くなった際の相続税の計算上、相続財産に加算されます

 

ちなみに暦年課税制度の場合は、

相続開始前3年以内の贈与についてのみ、相続財産に加算されます

 

つまり、目先の税負担だけを考慮すると、

特別控除額の大きい相続時精算課税制度の方が断然お得ですが、

長期的視点で考えると、

暦年課税制度を利用して毎年少しずつ贈与した方がお得だと言えます。

 

最後に三点目

この制度は、

父から受ける贈与、

母から受ける贈与、

それぞれ個別に選択することが可能です。

ですから例えば、

父から受ける贈与についてのみ相続時精算課税制度の適用を受け、

母から受ける贈与については通常通り暦年課税制度の適用を受ける、

というような感じにすることもできます。



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