相続コラム

「相続手続き」のコラム

預貯金の通帳や証書が見当たらない。

でも、故人が遺したメモや郵便物などをみると、どうも預金口座があるようだ。


さて、どうすれば良いのでしょうか?

通帳がないと解約手続きは出来ないのでしょうか?


結論から申し上げますと、大丈夫です。ちゃんと解約できます。

ただ、手順が少々面倒になります。


まず、相続人が、その金融機関の窓口に行きます。

持参するのは、


1.故人の戸籍(または除籍)謄本

2.ご自身が相続人であることを証明する戸籍謄本

3.ご自身の身分を証明するもの(免許証など)


これだけで充分です。

そして窓口で「この人の預貯金口座があるかどうか調べて欲しい」とお願いすれば良いのです。


今どきの金融機関のシステムは発達しておりますから、その人の氏名・生年月日で口座の有無を検索することが可能です。

すぐにその場で調べて、口座の有無を教えてくれます。


唯一、そうはいかないのが「ゆうちょ銀行」です。

ゆうちょ銀行だけは、窓口で即答してくれません。

「貯金等照会書」という書類を窓口に提出し、貯金センターから後日照会書が送付されます(おおむね2〜3週間ほどかかります)。


口座の有無、ある場合はその商品名、口座番号など全て判明しますと、解約手続きに移行できます。

その金融機関によりますが、大抵は「通帳が見当たりませんでした」という旨の誓約書を書かされます。


なお弊社は、上記の手続きを全て代行しております。

(委任状を頂戴できれば全て代行可能です)

この方法で、数百万円単位の隠し?預金口座を発見したこともあります。


故人の遺した僅かな証拠が、多額の財産を発見するきっかけになることがあります。

遺品は無下に処分せず、よく中身を吟味しておきましょう。



遺贈とは、遺言により、人に自らの財産を無償で譲ることです。


推定相続人(将来相続人となるであろう人)以外の人に対しては、自らの死後、この方法で財産を譲り渡すことができます。


遺贈には、二種類あります。


まず包括遺贈

これは、遺産の全部または一部を、割合を示して譲ることです。


【具体例】

 ・山田太郎に、私の全財産を遺贈する。

 ・佐藤花子に、私の全財産の2分の1を遺贈する。


そして特定遺贈

これは、具体的な特定財産を譲ることです。


【具体歴】

 ・田中一郎に、現金○万円を遺贈する。

 ・鈴木ハナに、○○市○○番地の土地を遺贈する。



これらの遺贈は、いずれも放棄することが可能です。

ただし、その方法が異なりますので注意が必要です。


まず包括遺贈の放棄ですが、これは裁判所で放棄の手続きをしなければなりません。

期限は3ヶ月以内です。

なんか相続放棄の手続きと似ておりますが、これは「包括遺贈は相続と似たようなもんである」という考え方に基づくものです。


そして特定遺贈ですが、これは特に裁判所での手続きは必要ありません。

口頭又は書面で、他の相続人等に放棄する旨を伝えれば済みます。

後々の証拠を残すためにも、できれば書面できちんとすべきでしょう。

決まった書式は特にありません。放棄する旨が理解できる内容であれば充分です。

これは特に期限はありませんが、もちろん早いに越したことはありません。



なお、遺贈を放棄した財産は、一体どうなるのでしょうか?

これは通常の相続財産として、相続人間において遺産分割協議の対象となります。



不動産登記されていない建物は、実は結構あります。


住宅ローンなどを組んで建物を購入する場合は、債権者である銀行の担保をつける必要がありますので、必ず不動産登記します。

ですから我々のような一般人にとっては「建物は登記するものだ」という認識が当然のようにあります。


しかし、実は、不動産というものは「必ず登記しなければならない」という決まりはありません。

極端な話、登記しなくてもいいのです。


例えば、自宅に隣接する車庫やガレージ倉庫。

これはまあ規模も小さいですし、その自宅の附属物なので所有者は同じである、と容易に推測できますので、登記されてなくても別段困ることはないでしょう。


ちょっと困るのは、自宅そのものが登記されていないパターンです。

「え、そんなことあるの?」と驚く方もいらっしゃるでしょうが、実はあります。


或る程度お金に余裕のある方は、わざわざローンを組まずに、自己資金で建物を建てることができます。

で、建築業者に「登記しましょうよ」と当然勧められるのでしょうが、「いや、登記費用がもったいないから、やらない」と言って断る、というパターンです。


登記することは絶対的義務ではありませんから、しなくてもよいのです。

その分、登録免許税や専門家報酬などの費用負担は減ります。

が、後で困ることがあります。


いつどこで困るかといいますと、ご自身が亡くなった後です。

ご自身が生きている間は「この家は俺のものだ」と主張できますが、亡くなった後はどうなるでしょうか?

まず相続人間で遺産分割協議を行い、相続人のうち誰かがその建物を相続することになります。


が、その後、その相続人が「この建物は私が相続した」と、どうやって主張するのでしょうか?

遺産分割協議書をわざわざ引っ張り出して見せつけなければなりません。

それはちょっと格好悪いですね。


そういう事態を考えますと、やはり登記すべきでしょう。

登記すれば、その建物の所有者は誰なのか、はっきりと第三者に示すことができます。


登記されてない方は、今からでも遅くありませんので、登記されることをお勧めします。


なお、登記されてない建物についても、固定資産税はかかります。

市町村役場の職員が、その担当区域を毎年調査しますので、新たに建物が建てられると、その登記の有無に関係なく、固定資産税を課すことになります。



国民年金などを受け取っていた方が亡くなった場合、本来受け取るべきであった年金の未支給分、つまり「未支給年金請求権」というものが発生します。


もう少し噛み砕いて説明しますと、年金というものは毎年2月、4月、6月、8月、10月、12月とそれぞれ2ヶ月置きに支給されます。

これらの支給は、「後払い」です。つまり例えば4月に支給される年金は、その前の2月〜3月分、ということになります。このケースにおいて、その受給者が4月上旬に亡くなったとします。年金の支給日は15日なので、4月15日に受け取るべきであった年金(つまり2月〜3月分)を受け取らずに亡くなってしまった、ということになります。これを未支給年金といいます。


未支給年金は、その亡くなった受給者と生計を一にしていた配偶者や子などが所定の請求手続きをすることによって、受け取ることができます。


この未支給年金が、相続財産(つまり遺産分割協議の対象となり、相続人で分ける必要がある)なのか、それとも受け取った遺族の固有の財産(つまり遺産分割協議の対象とはならない)なのか、ずっと議論されておりましたが、平成7年の最高裁判決により、「受取人の固有財産である」との見解が出されました。


よって、この未支給年金については、その受け取った配偶者または子などの固有財産でありますので、他の相続人と分ける必要はありませんし、遺留分の算定対象ともなりません。


いまだに多くの遺産分割協議書において、この未支給年金を相続財産として分割対象としているものが多くみられますが、これは誤りです。


相続税の計算においても、当然ながらこれは相続税の課税対象とはなりません。

http://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/shitsugi/sozoku/02/09.htm


この取扱いについては、ずっと税務署内の内部通達として未公開でしたが、今では上記の通り質疑応答事例として国税庁HPで公開されております。


ただし、くれぐれもご注意頂きたいのですが、

相続税の課税対象とはなりませんが、その受け取った個人の所得税の課税対象にはなります。

この未支給年金の額は、一時所得として取り扱われます。


一時所得は、年間50万円の非課税枠があります。

未支給年金は、よほど多額の年金でない限りは通常50万円を超えることはありませんが、もし他に一時所得に該当するもの(生命保険の満期一時金など)がある場合は、それら全てを合算して算定されますので、よくよくご注意願います。



相続税申告のご依頼を受けた場合においては、大抵は遺産分割協議書の作成まで当方で請け負うことが多いです。


が、ごくまれに、既に相続人ご自身で協議書を作成し、相続人全員の署名捺印も済んだ状態で、「この内容で税務申告をお願いします。」というご依頼もあります。


それはそれで当方としてもそのご依頼通りにやらせて頂くのですが、このケースにおいてほぼ100%該当するのが、「協議書に記載されていない新たな財産」の発見、です。


発見というのも少々大袈裟ですが、最も多い事例を挙げますと


1.故人の所得税凖確定申告の還付金

2.故人が加入していた生命保険の入院給付金(死後に遺族が請求したもの)

3.故人が会社経営者であった場合、その会社に貸し付けていた債権

4.当方が調査した結果新たに発見された少額預貯金口座

5.故人が所有していた絵画など美術品

6.故人が加入していた生協積立などの解約金


私の経験上、これらが最も多いです。


このように、当方が業務を請け負い、色々と作業していく過程で、相続人が認識していなかった(あるいは認識していたが、まさかそれが遺産分割協議の対象になるとは思ってなかった)財産がポロポロと見つかることはよくあります。


このような場合、もう一度遺産分割協議を行い、それらの財産についてどう分割するかを話し合う必要があります。

もっとも、上記1の国税還付金や2の入院給付金などは、その還付・給付を請求する段階において受取人を指定するのが通常でありますから、その受取人がイコール財産取得者である、とするのが自然な流れでしょう。


また、既に作成し署名捺印された協議書において、例えば


「この協議書に記載のない財産が新たに発見された場合は、各相続人がそれぞれ法定相続分の割合で取得する(または「相続人Aがすべて取得する」など)」


と記載されている場合は、その文言に従うことになりますので、新たに協議を行う必要はありません。

私としては、この文言を入れる方法をお勧めします。

何故かといいますと、相続発生から数年後に新たな財産が発見された場合(ケースとしてはレアでしょうが、全く可能性が無いとは限りません)、その相続人のうち一人が認知症になってしまっていたとしたら、あるいは亡くなっており、その子や兄弟が相続権を引き継いでいたとしたら、話は結構ややこしくなってしまいます。

そうならないように、あらかじめ面倒な事態を想定した文言を協議書に入れておけば、スムーズに遺産分割できますので、無用な手間やトラブルを省くことができます。



また、逆のケースとして、遺産分割協議の対象とならない財産を協議書に載せてしまっているケースがあります。

さすがに「死亡保険金は相続財産ではない」という知識はかなり浸透されておりますので、死亡保険金が協議書に載るケースは稀ですが、故人の未支給年金を載せているケースは割とあります。未支給年金は、死亡保険金と同様に、受取人固有の財産とされておりますので、遺産分割協議の対象とはなりません(ただし所得税の一時所得に該当しますのでご注意を)。


遺産分割協議は、急がなくても構いませんので、まずは私たち専門家にご相談ください。



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