相続コラム

「相続手続き」のコラム

相続のお仕事を沢山手がけておりますと、しょっちゅう登場する財産があります。


いわゆる「原野商法」で購入したと思われる土地です。


数十年前(私はまだ生まれているかいないか、の頃ですが…)に大流行したらしいですね。

「この土地は今はまだ原野ですが、これから大規模な開発工事が行われる予定です。今のうちに買っておけば、後でボロ儲けですよ!」

という手口で二束三文の土地を買わせて、結局開発工事など全く行われずにそのまま放置…。


処分するにも処分できず、そのまま所有し続け、そしてお亡くなりに…。

というパターンは正直かなり多いです。


とにかく二束三文の土地なので、固定資産税すら課されないケースが殆どです。


このような、価値がゼロに等しい土地であっても、相続財産であることには変わりありません。

どなたかが相続するしかありません。


このケースは本当に多いので、私も不動産業者さんに相談したことは何度もあります。

業者さんの回答は、「う〜ん、よくある話ですよね。でもどうしようもないです。処分しようにも買ってくれる人はいませんよ。」と、ほぼ決まっております。


市町村などに寄付しようにも、そんなもの(失礼ですが)を有難く頂戴する市町村はまずないでしょう。


今のところ、この原野商法に関する明快な解決方法は見当たらない、というのが正直なところです。

粛々と相続手続きを進め、万が一、将来本当に開発されることを祈る以外になさそうです。



相続財産は、現預金や不動産など、いわゆる「正の財産」ばかりではありません。

銀行ローンなどの「負の財産」もあります。


病院の入院費、光熱費など、本人の死亡後に発生する細かい支出も負の財産の一部ではありますが、金額的にはやはり銀行ローンが最もインパクトが強いものでありましょう。


団信保険というものがあります。

そのローンに団信保険が付されていれば、本人の死亡と同時にローンは消滅しますから、何の心配もありません。しかし、団信保険が付されていなければ、そのローンは本人の死後も残り続けます。つまり相続財産として、相続人の誰かが負担し続けることになります。


遺産分割協議において、複数の相続人のうち、例えば長男がそのローンを承継する、というような協議をすることは勿論可能です。

しかし、ローンというものは、相手(つまり債権者)が存在するものです。

その分割協議内容に対して、債権者が首を縦に振らなければ、その協議内容は事実上有効とは成り得ません。


つまりどういうことかと言いますと、債権者つまり銀行側の判断次第によっては、そのローンを相続人全員が法定相続分割合に基づき承継することになる可能性がある、ということです。


ただし現実的には、銀行側もその辺の問題は融資審査の段階である程度は検討しておりますので、例えば「いざという時にはこの人にローンを承継して貰いたい」という人(もちろん将来相続人になるであろう人です、例えば配偶者、長男など)に連帯保証人になってもらい、本人死亡時にはその保証人が承継する、という感じでスムーズに事が運ぶことが多いです。


が、上記のような事前対策が全くとられていないケースも散見されます。

そのような場合には、あらかじめ銀行側と話し合い、事後の対応策を整理しておく必要があります。


負の財産の相続は、正の財産よりも慎重に考える必要があります。



空前の相続ブームです。

雑誌類の相続特集などが世を賑わせております。


「相続」を「争族」と読み替えるなど、まるで遺産争いをわざわざ煽るかのような勢いです。


しかし全ての相続が「争う」わけではありません。

円満に進む相続だって数多くあります。

そもそも、なぜ相続で争いが起こるのでしょうか?


私の拙い経験上、争いの根本的原因は、その大部分が次の二つに集約されます。


1.親の子に対する「愛情」「金銭的援助」が不平等だったケース

例えば、長男と次女を溺愛し、長女にはさほど愛情を注がなかった場合。

長女の心には深いしこりが残り続けます。

「兄と妹はあんなに愛されていたのに、なぜ私は愛されなかったの?」


他の事例としては、長男だけが私立大学に進学し、長女と次女は高卒のまま就職した場合。

長女と次女は、こう思い続けるでしょう。

「私たちだって、大学に通って学生生活を満喫したかったのに。」


このような不平等感が、相続時に顕在化します。

「せめて遺産をたくさん分捕らなければ、私の気持ちは永遠に収まらない。」

と。


2.遺族の誰か(あるいは全員)が金銭的に困窮しているケース

あえて多く説明するまでもないでしょう。

職が無い、あっても給料が安い、子が進学して仕送りが厳しい、家のローンが払えない。

そのような状況で遺産相続の話が舞い込んで来たら、まず大抵の人は目の色を変えて飛び付きます。


もちろん他にも色々あります。

例えば自社株式、不動産など特定の資産を巡る争いなど。

しかし殆ど大部分は、上記二つが原因で争われるのではないかと思います。


親の立場で身に覚えのある方は、ぜひ今のうちから対策を講じておきましょう。

法的な対策としては、生前贈与や遺言など。

あるいは我が子全員に対して今一度、心を通わせてみることも大事です。



数多い相続手続きの中でも、間違いなく最も厄介な部類に入る存在。


それが、いわゆる「名義借り」財産です。

その名の通り、他人の名義を借りて形成された財産のことをいいます。


実例として最も多いのは、やはり何と言っても郵便貯金です。

故人が、生前において、孫名義や甥姪名義など沢山の名義借り貯金口座を開設し、それらの口座に残高を移し替えていた、というケースは結構見受けられます。


故人が勝手に口座を名義借りしたのですから、民法上の贈与には該当しません。

つまり、その故人が遺した相続財産、ということになります。

じゃあ相続人が解約手続きを・・・、と簡単に済む話ではないのです。


窓口の担当者は「その名義人でないと解約手続きはできません」と突っぱねるからです。


では、どうすればよいか。

結論から申し上げると、その名義人ご本人に登場して頂くしかありません。

その名義人自ら解約手続きをするか、あるいは相続人が、その名義人から委任状をもらって手続きを代行するか、のいずれかになります。


(その名義人が強欲な人で「俺の名義なんだからこの口座は俺のもんだ」と主張されてしまうと話はややこしくなりますが。。。それはさておき)


さて、もっと面倒なケースがあります。

その名義人が、現実に存在する人ではないケースです。

故人が、テキトーに思い付いた名前で口座を開設していた、という事例がまれにあります。


何でそんなことしたの?

と言われても、その故人が行った行為ですから、何とも分かりようがありません。


このようなケースは、正直お手上げです。

諦めて放っておくか、場合によっては法廷で争うしかないでしょう。


郵便局に知り合いがいて、その人が何とかしてくれた・・・。

という話もたまに聞きますが、最近はコンプライアンスが厳しい時勢ですから、そう簡単にはいかないでしょう。


というわけで、本日の結論です。

名義借り預貯金は、遺族にとって迷惑以外の何物でもありません。

お早目に整理しておくことをお勧めします。



証券会社で口座を開設し、上場株式の保有・売買や投資信託などで資金を運用する方は数多くいらっしゃいます。


そのような方が亡くなった場合、それらの株式や投資信託は、どうやって相続手続きをすればよいのでしょうか?


ふだん証券会社と縁のない方(馬鹿にしているわけではありません。実際、この記事を書いている私も株や投信には興味ないので、証券会社には全く縁がありません。)にとっては、少々面倒です。


私の知る限りにおいて、ほぼ全ての証券会社では、故人の相続財産である株式や投資信託を、そのまま解約して現金化するわけにはいきません。

まず、その証券会社にて、相続人名義の口座を開設する必要があります。


「えっ、私は証券会社とお付き合いなんてしたくないから、そんな口座開設なんで嫌だ。」

と言っても仕方ありません。

まず口座開設しないことにはどうしようもないのです。


そして、故人の口座に入っている株式や投資信託などの商品を、その相続人の新口座に移し替えます。


後は相続人の好きなようにすればよいのです。

そのまま保有し続けるのも良し、さっさと解約して現金化するのも良し。


私のように普段証券会社で資金運用しない人は、さっさと現金化してしまった方が無難かもしれません。

資金の運用は、経験と勘、センスがモノをいいますので。

興味のない方は近寄らない方が無難でしょう。


そうは言っても、相続手続きのためには一瞬ほんの少し近寄らなければなりません。


あと投資信託など商品の種類によっては、複数の相続人に分割できる商品、できない商品があります。

窓口の担当者に事前によく確認したうえで遺産分割協議を行いましょう。



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