相続コラム
「信託」のコラム
札幌の相続ブログ 信託入門 その8 〜 受益者連続信託とは 〜
2014年01月27日
Aさんが、自らを受益者とする信託契約を作成した、とします。
その信託契約には例えば、Aさん亡き後は長男Bを受益者として、そして更にB亡き後はBの子Cを受益者とする、というような条項を付すこともできます。
時系列でまとめますと、
第一受益者=A
↓
A死亡
↓
第二受益者=B (Aの長男)
↓
B死亡
↓
第三受益者=C (Aの孫・Bの子)
ということになります。
このように、Aさん亡き後の受益者を複数定めておく信託のことを「(後継ぎ遺贈型)受益者連続信託」といいます。
いわば遺言代用信託の進化系みたいなものですが、仮にこの内容を遺言で定めようとすると、A→Bの流れに関しては全く問題ないのですが、B→Cの流れの部分は法的に無効となります。
ご本人様の家族関係、財産状況は様々です。
その状況に応じて、受益者連続信託を活用するのが最もベストである、という局面は多いのではないかと思います。
札幌の相続ブログ 信託入門 その7 〜 遺言代用信託とは 〜
2014年01月19日
遺言を活用して信託する方法があります。
公正証書遺言において、「私の亡き後は、遺産をこのように信託してください。」と指定しておく方法です。
そうすれば、ご自身亡き後、遺言執行に合わせて信託が開始されることになります。
なぜそのようなことをする必要があるかといいますと、例えば
「ご自身亡き後、遺族が年老いた配偶者と重度の障害を持つ息子しかいない」
という状態を想像してみて下さい。
このままでは死ぬに死ねない、というのが本音ではないでしょうか。
仮に多額の財産を残すことが可能だとしても、その財産を遺族のために効率良く使えなければ全く意味ありません。
このような状況において、信託の活用を検討してみたいと思います。
・信頼できる身内(甥っ子など)を受託者として、遺産を管理してもらう。
・配偶者と息子を受益者として、毎月一定額の生活費を与える。
・場合に応じてグループホーム等に遺族を入居させ、その費用も遺産で賄う。
・受託者には何かと骨を折らせるので、所定の費用を遺産からお支払いする。
このようにすれば安心ではないでしょうか。
上記の重要なポイントは、「誰を受託者にするか」です。
受託者としてしっかりと機能して頂く必要がありますので、信頼できる人でなければなりません。
受託者が正直ちょっと頼りない場合には、その事務を代行する人や、受託者自身を監督する人などを選任しておくことができます。これについてはまた改めて解説します。
札幌の相続ブログ 信託入門 その6 〜 「民事信託」と「商事信託」 〜
2014年01月12日
皆様が抱く信託のイメージは、なんとなく「イコール○○信託銀行」ではないでしょうか。
信託銀行は、その名の通り、信託を業務として行います。
当然、お客様から報酬を頂戴します。
このように、信託銀行や信託会社が「業」として受託者になる信託を「商事信託」といいます。
「業」とは、不特定多数の者を相手とする行為のことです。
商事信託を行うためには、国の認可を得る必要があります。
それ無くして商事信託を行うと、法律違反で罰せられます。
そして、商事信託と相反する定義として「民事信託」というものがあります。
例えば、不動産オーナーの息子が受託者になる、というような、業として受託者にならない信託のことです。
大抵は身内同士が委託者・受託者・受益者というスキームになりますので、「家族信託」と言い換えることもできます。
当シリーズは、もちろん「民事信託」を前提として今後解説し続けていきます。
信託銀行のことを説明しても仕方ありませんので。
さて、頭の切れる方は、次のような疑問が湧くことでしょう。
「私が例えば、父、母、叔父、叔母など複数の身内の受託者になって、それぞれ信託報酬をもらうことになれば、これは商事信託になってしまうのだろうか?」と。
結論を申し上げますと、これは商事信託にはなりません。
何故ならば、上記はあくまでも身内だけを対象としたものであり、不特定多数の者を対象としたものではないからです。これは「業」の範疇には入りません。
札幌の相続ブログ 信託入門 その5 〜 「所有権」と「受益権」 〜
2014年01月05日
我々の一般常識は、
「モノの所有権を有する者が、そのモノから生じる果実を得る」
というものです。
果実とは、例えば預金における利息、不動産における賃貸収入または売却益など、
そのモノを所有していることによって得られるご褒美のようなものです。
何を当たり前のことを、と思うかもしれませんが、
信託においては、それが当たり前でなくなります。
信託が開始されますと、
そのモノの所有権が二つの権利に分離されます。
新たな「所有権」と、そしてもう一つは「受益権」です。
新たな所有権はさて置き、まず受益権について説明します。
受益権とは、そのモノつまり信託財産から生じる果実を得る権利のことです。
つまり今までは、所有権者が当然のように果実を得ておりましたが、
信託開始後は、受益権を有する者が果実を得ることになります。
そして新たな所有権はどうなるのかと言いますと、
受託者のものとなります。
つまり「この財産は受託者によって信託されてますよ。」という事実を内外に知らしめるだけの形式的な存在と成り果てます。
モノというものは結局のところ、果実を得られること自体に旨味があります。
果実を得られる権利、つまり受益権がその旨味を有することになり、
所有権そのものは全く旨味がなくなります。
例えば100円の不動産を信託した、とします。
信託前は、上記100円の価値とは、イコール所有権の価値でありました。
信託後は、所有権の価値はゼロとなります。
と同時に、そこから分離された受益権の価値が100円となります。
つまるところ、
受益権を制する者こそが信託契約を制する、とでも言えましょうか。
札幌の相続ブログ 信託入門 その4 〜 「自益信託」と「他益信託」 〜
2013年12月30日
信託のかたちは、大きく次の二つに分類されます。
一つ目は、自益信託です。
自益信託とは、委託者が信託配当を受けとるかたちです。
つまり、委託者=受益者、となります。
例えば地主さん(委託者)が、息子(受託者)に不動産物件の管理を委託し、
その不動産から生じる賃貸収入は地主さんがそのまま受け取り続ける(受益者)、
というようなことです。
二つ目は、他益信託です。
他益信託とは、委託者以外の人が信託配当を受け取るかたちです。
つまり、委託者≒受益者、となります。
例えば地主さん(委託者)が、息子(受託者)に不動産物件の管理を委託し、
その不動産から生じる賃貸収入は娘さんが受け取ることにする(受益者)、
というようなことです。
前回の話で、三人の登場人物(委託者・受託者・受益者)の説明をしましたが、
これらの人物はそれぞれが別人とは限らないのです。
自益信託の場合は、委託者=受益者、ですので、一人二役となります。
場合によっては一人三役、も有り得ます(現実にはまずないと思いますが…)。
これが信託を難しくしている一つの要因です。
しかし「ああ、そういうもんなんだ」と割り切って理解すれば、どうってことありません。
なお実際の信託の現場においては、これら自益信託と他益信託をミックスして活用することが多いです。
まず最初は自益信託からスタートし、その後、もっとぶっちゃけますと委託者の死後、その相続人を受益者とする(他益信託)、というような感じで信託契約を継続させることになります。