相続コラム
「信託」のコラム
札幌の相続ブログ 信託入門 その29 〜 信託の計算期間 〜
2014年06月23日
信託期間において、受託者は毎年(1年以内の期間であれば良いのですが、実務上毎年1回が通常になろうと思います)、きちんとした会計処理に基づき作成された帳簿、貸借対照表、損益計算書を受益者に報告する必要があります。
信託財産のうちに賃貸不動産がある場合には、不動産所得が発生します。
また金融資産などの種類によっては、配当など各種所得が発生する場合もあります。
不動産や株式などを売却した場合には、譲渡所得税が発生します。
これらの所得は、当然ですが税務署に確定申告しなければなりません。
そこで実務上、上記の会計報告に関する計算期間を、毎年1月1日〜12月31日としておく必要があります。
そうしないと、二度手間三度手間になってしまうからです。
例えば、信託の計算期間を毎年4月1日〜3月31日にした、と仮定しましょう。
それはそれで結構なのですが、税務署の確定申告はあくまでも1月1日〜12月31日の暦年課税が大原則なので、結局は3月締めの決算と12月締めの決算、2種類も作成しなければならない羽目になります。
信託の計算期間を暦年にしておけば、その決算をそのまま確定申告に使うことが可能となります。
札幌の相続ブログ 信託入門 その28 〜 信託終了後の残余財産帰属 〜
2014年06月16日
信託が終了すると、その信託財産が誰のものになるか、という問題が生じます。
原則は、信託契約等の定めに従うことになります。
大抵の場合は受益者がその財産を取得するということになりましょう(残余財産受益者)。
受益者以外の人を指定することも可能です(帰属権利者)。
帰属権利者は、信託の最中は何の権利も有しませんが、信託が終了して清算する段階において受益者とみなされることになります。
例外として、信託契約等に何らの定めがない場合は、委託者(委託者が死亡している場合にはその相続人)が財産を取得することになります。
取得時の税金など厄介な問題がありますので、出来るだけ受益者が取得するよう契約に定めておくのが無難だと思います。
札幌の相続ブログ 信託入門 その27 〜 信託の終了 〜
2014年06月08日
信託といえども、未来永劫続くわけではなく、どこかのタイミングで終了します。
まず原則は、信託契約等の定めに従います。
例えば「第二受益者たる孫Bが信託財産を取得した時点において、この信託は終了する。」というような記載があれば、その記載内容が達成された時点において信託は終了することになります。
例外として、信託契約等にその定めがない場合、委託者と受益者との合意により終了させることができます。
ただし遺言信託は委託者が存在しませんので、この例外は適用できず、終了させることはできない、ということになってしまいます。
そこでもう一つ、上記によらない場合においても、次に該当する場合には信託が終了します。
1.信託の目的を達成したとき(または達成することができなくなったとき)
2.受託者が受益権の全部を有する状態が1年間継続したとき。
3.受託者が1年間存在しない状態が1年間継続したとき。
4.その他、信託を終了させることが受益者の利益に適うものであるとして、裁判所が終了を命じたとき。
信託のスキーム構築においては、終了、つまりゴールも見据えたうえで検討を進めましょう。
札幌の相続ブログ 信託入門 その26 〜 遺族に毎月一定額の生活費を渡したい場合 〜
2014年06月01日
人間とは弱いもので、大金を手にすると目がくらみ、我を忘れてしまうものです。
(と、一般的には言われております。私はそんな経験がないので分かりませんが…)
自分の財産をそのまま子に相続させてしまうと、子は我を忘れて一気に堕落してしまうのではないか。
そのようなご心配をされる方も多いだろうと思います。
信託を活用することによって、例えば次のようなスキームを組むことが可能です。
1.長男(=受益者)に現金1000万円を相続させる。
2.ただし、その現金は妻(=受託者)が預り、管理する。
3.妻は長男に対して、毎月10万円を長男に手渡す。
このようにすれば、長男は一度に多額の現金を手にすることなく、毎月分相応なお金を受け取ることになります。
かのマイケル・ジャクソンが、上記に近いスキームを遺言信託の形で遺したことは記憶に新しいところです。
認知症の妻や両親、
浪費癖のある子、
知的障害などを持つ親族、
幼い孫、
その他、一気に多額の財産を渡すと何かと問題がありそうな人・・・
そのような人に財産を遺したいとき、上記のスキームを参考にしてみては如何でしょうか。
札幌の相続ブログ 信託入門 その25 〜 幼い子や孫への財産移転 〜
2014年05月25日
幼い子や孫へ財産を生前移転する方法として、次の2点が考えられます。
1.生前贈与による移転
2.信託による移転
まず生前贈与による移転を検証してみます。
幼い子や孫、つまり未成年は、法律行為を直接行うことができませんので、親権者である親が同意することによって行為が成立します。
例えば贈与契約書において、贈与者(あげる人)と受贈者(もらう人)の双方が署名捺印することになりますが、この場合の受贈者である子や孫については、本人に代わって親が代理で署名捺印することになります。
注意すべきは、贈与契約が成立していない、とみなされるケースです。
贈与というものは、贈与者と受贈者との合意が大前提となります。
贈与者が、受贈者名義の預金口座を勝手に開設し、そこにお金をバンバン入金したところで、肝心の受贈者がそれを知らなかった場合には、贈与は成立していないことになります。
つまりそのお金は、形式上は受贈者の名義になっていたとしても、実質的には贈与者の所有物である、ということになります。
俗にいう「名義預金」です。
そこの部分が曖昧なまま、相続税の税務調査で、こっぴどく調査官に絞られてしまうケースが多発しております。
このリスクを回避する手段として、信託による財産移転が威力を発揮します。
上記の事例を信託に当てはめますと、受贈者となるべき子や孫が受益者となります。
信託契約は委託者と受託者との合意により成立しますので、受益者が未成年であっても全く問題ありません。
また信託契約が有効に成立すれば、贈与における契約成立の有無や名義預金といった曖昧な問題は起こりようが無く、全てクリアになります。
上記いずれにしろ、贈与税の問題は考えておく必要があります。
信託であったとしても、受益者となった時点で、実質的に受益権という形で利益を得たことになりますので、贈与税の課税対象となります。
贈与税の申告など、必要な手続きは全て漏れなくやっておきましょう。